1973-1980

ここでは、マシューズ渡米後の作品を御紹介。

valley

Valley Hi / Ian Matthews (1973)
 ELECTRA 75061 (US)

A-1. Keep on sailing
2. Old man at the mill
3. Shady lies
4. These days
5. Leaving alone

B-1. 7 Bridges Road
2. Save your sorrows
3. What are you waiting for
4. Propinquity
5. Blue blue day

produced by Michael Nesmith
Recorded at The Countryside Studio, Los Angeles 




英国という風土に育ったマシューズが憧れの地アメリカに渡って、究極の夢、カントリーにどっぷりと浸ったこのアルバムは、その全体的なアコースティックサウンドに包まれて、一瞬の輝きを放っている。
ピアノとドブロで始まるA-1.のイントロを聴くだけで、このアルバムの価値が決定する。"There's a Carolina moon, today"という唄の一節が、誰もが夢見たアメリカン・ドリームの典型的な具現像であろう。
Michael Nesmithのプロデュースにより、マイルドなカントリーフレイヴァーに味付けされたこのアルバムは、マシューズの数あるアルバムの中で、ひときわ、安 息の日々を描いている。しかしラストの曲で、"I feel like running away from it all"などと唄われると、マシューズの安住の地は一体何処にあるのかと疑いたくなる気もする。
kettle

レコード会社から渡米を勧められソロに戻ったマシューズ初の米国録音盤。
同時代のソングライターの作品がカントリータッチのアコースティックサウンドで奏でられていますが、Swamp WaterのByron Berlineのフィドルを加えたトラッド曲A-2.では、ちょっとFairport風味もあります。B-1.のEaglesヴァージョンは、このレコー ドを参考 にしているようです。J. BrowneのA-4.では、素晴らしかった来日公演の演奏が思い出されます。
cup


somedays

Some Days You Eat the Bear and Some Days the Bear Eats You
/ Ian Matthews (1974)
Elektra EKS-75078 (US)
 

A-1. Ol' 55
2. I don't wanna talk about it
3. A wailing goodbye
4. Keep on sailing
5. Tried so hard

B-1. Dirty work
2. Do I still figure in your life
3. Home
4. Biloxi
5. The fault 

produced by Ian Matthews 


米国での2作目は、セルフプロデュース。自らバックアップメンバーを集めた。一般的に最高傑作との評判通り、絵に描いたようなウエストコーストサウンドで、聴きやすさと言う点では群を抜いているようです。
cup

マシューズの選曲眼は、他に類を見ない程素晴らしい。その一番良い見本がこのアルバムだろう。Tom WaitsのA-1.、Danny WhittenのA-2.とくれば涙々の展開が見えてくる。Jesse WinchesterのB-4.も光っている。Gene ClarkのA-5.も入っている。
僕の好みのカントリー系のシンガーソングライター、Jerry Jeff Walkerも他人の曲をうまく採り上げGuy Clarkを発掘したのは言うまでもない事だろう。
マシューズがカヴァーした曲は色々なアルバムで聴けるのだが、僕が一番気に入っている曲は、Plainsongの'Louise'に決定している。マシューズの選曲眼は、そのサウンドといい歌唱といい、「先見性を持った品の良さ」があって、僕に訴えてくるものがある。
kettle


gospel

Journeys from Gospel Oak / Ian Matthews (1974)
TRIO AW-3012 (JP 1978)

A-1. Knowing the game
2. Polly
3. Things you gave me
4. Mobile blue
5. Tribute to Hank Williams

B-1. Met her on a plane
2. Bride 1945
3. Franklin Avenue
4. Do right woman
5. Sing me back home

produced by Sandy Roberton
Recorded at Sound Techniques November 1972 
 


発表時期は前後していますが、こちらはエレクトラのために'72年に英国で録音された音源。Fairportの(当時)新メンバーJerry DonahueやAndy Robertsらを迎え、英国らしい土臭く懐の深いカントローロックが楽しめる秀作となっています。ここではカバー曲がほとんどですが、何と言っても "Do Right Woman"が光ります。ここではリズムを8ビートに変更し楽曲の魅力を十分に引き出していて、アコギのカッティングがそこはかとないソウルテイストを醸 し出 しています。
北中正和さんの解説には、マシューズはこのレコードの発表を承諾していなかった旨の情報が書かれています。
cup


BROKE

GO FOR BROKE / IAN MATTHEWS (1976)
Columbia PC 34102 (US)
A-1. Darkness, darkness
2. I'll be gone
3. Brown eyed girl
4. Rhythm of the West
5. Groovin'

B-1. Lonely hunter
2. Steamboat
3. A fool like you
4. Just one look
5. When the morning comes

Produced by Norbert Putnam and Glen Spreen
Recorded at Quadrafonic Sound Studio, Nashville, Tenn. 
Engineered by Marty "Sound Sculptor" Lewis
Remix Engineer : John Calder

名うてのセッションメン(Kenny Buttrey, David Briggs, Reggie Youngら)参加のナッシュビル録音なのでカントリーをやるのかな、と思いきや、テイストはむしろブルーアイドソウルっぽい感じで、意外にこれがハマっ ています。そういえばホーンセクションはマッスルショールズから出張してきてますね。南部的な骨太のリズム、良く練られたアレンジとコーラスワークが印象 的です。歌声も爽快。ポップなB-1.やレゲエ風味B-2.等自作曲も良いですが、Byrdsを思わせるギターアレンジの'Brown eyed girl'がカッコ良い。
ちなみにこのレコード、音響的に凝った音作りがなされているようで、奥行きのある非常に良い音質で聴くことができます。エンジニアのミドルネームが「音の彫刻家」かぁ、なるほど合点がいきました。
cup


hitrun

Hit and Run / Ian Matthews (1977)
COLUMBIA AL 34671 (US)

A-1. The frame
2. One day without you
3. Times
4. I will not fade away

B-1. Tigers will survive

2. Just one look
3. Help to guide me (I need your help)
4. Shuffle
5. Hit and run

Produced by Nikolas K. Venet



う〜ん、いい曲もあるんだけど、アレンジが凡庸で焦点が定まらない。ジャイブ系に挑戦したりソウルっぽい感じを出そうと努力の跡は伺えるものの、 こーゆーのってやっぱり演奏のノリがイマイチではちょっとツラい。またイアンの歌声はアコースティックギターとの相性がとてもいいと思 うのだが、サックスやらキーボード主体の演奏が その魅力を殺してしまっている印象です。発売当時、期待して入手したのだが、とてもガッカリした記憶があります。'70年代唯一の失敗作かも。
cup


stealin

Stealin' Home / Ian Matthews (1978)
Mushroom MRS-5012 (US)

A-1. Gimme an inch
2. Don't hang up your dancing shoes
3. King of the night
4. Man in the station
5. Let there be blues

B-1. Carefully taught
2. Stealin' home
3. Shake it
4. Yank & Mary / Smile
5. Slip away
6. Sail my soul

produced by Sandy Roberton and Ian Matthews


Terence Boylanの2曲(内'Shake it'は全米トップ20)の印象が強いからか、いわゆるAOR的、とも評される有名な一枚ですが、今聴くとフォークっぽい感じも強いですね。 Steeleye SpanのRick Kempらが参加した久々の英国録音ですが、アレンジャーとしてもクレジットされているBryn Haworthの変幻自在なギターワークが全体のトーンを決定しているようです。
B-4.のメドレーではチャップリンの作品'Smile'が織り込まれていますが、コレ数年前コステロの歌で日本でヒットしたものと同一曲です。Robert Palmerのカバーも良いですが、モロEaglesな感じのA-3.や自作のタイトル曲も聴きもの。このアルバムからヒットが出たことで、来日も実現し、素 晴らしい歌声を体験できたので、ファンには想い出深い作品となりました。
cup


friends

Siamese Friends / Ian Matthews (1979) 
 
Rockburgh ROC 302 (UK)
A-1. You don't see me
2. Survival
3. Heatwave
4. Home somewhere
5. Crying in the night

B-1. The babe's she's on the street
2. Hearts on the line
3. Anna
4. Lies
5. Runaway 

Produced by Sandy Roberton




Southern Comfort時代のパートナーMark Griffithsのギターを中心に、若干ロック寄りにシフトした作品。当時は好印象を持っていたのですが、今聴くと変化に乏しくちょっと平板な印象があります。
cup


spot

Spot of Interference / Ian Matthews (1980)
RSO RS-1-3092 (US)

A-1. I survived the 70's
2. She may call you up tonight
3. I can't fade away
4. Driftwood from disaster
5. Why am I

B-1. No time at all (see how they run)
2. For the lonely hunter
3. See me
4. Civilisation
5. What do I do

produced by Sandy Roberton 



何故かオリジナルより1曲少ない('The hurt')米国盤。ジャケの感じから想像されるように、ニューウエイブ的なギターサウンドを意識した音作り。かなり頑張っていますが、落ち着きのあるマ シューズの歌声とは相性が今ひとつ。シンガーソングライターと呼ばれる人々の多くが、プロダクションに腐心していたこの時期、マシューズも例外では なかったようです。Eric Andersonがロックバンドを率いて来日公演を行ったという記事を読んだのもこの頃だったでしょうか。A-1.のタイトルが泣かせます。
cup

Iain Matthews
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