POLITICAL SCIENCE


12

12 Songs / Randy Newman (1970)
REPRISE RS 6373 (US)


A-1. Have You Seen Me Baby?
2. Let's Burn Down The Cornfield
3. Mama Told Me Not To Come
4. Suzanne
5. Lover's Prayer
6. Lucinda
7. Underneath The Harlem Moon

B-1. Yellow Man
2. Old Kentucky Home
3. Rosemary
4. If You Need Oil
5. Uncle Bob's Midnight Blues

Produced by Lenny Waronker




私が持っているランディのアルバム中、一番古い音源がこのアルバム、随分後になって手に入れたものだ。このアルバムに続く『セイル・アウェイ』、『グッ ド・ オールド・ボーイズ』、『小さな犯罪者』等の充実した作品群の原点が垣間見えるような作品で、A-1.やB-2.のノリの良いリズミカルな曲、ピアノ一台 の弾き語り、内省的な静謐な曲など、彼の音楽の全ての要素が収められている、私自身かなりの愛着を持っている、佳作とも言うべきアルバムだ。バックを務め るギ タリストとしてライ・クーダー、ロン・エリオットと共にクラレンス・ホワイトが名を連ねている。彼のストリング・ベンダーという奏法は'68年の『ロデオ の恋人』のセッション等で注目されていて、B-2.にはスティール・ギターのような音色が聴こえているのだが、これがその奏法を使ったものなのかは定かで はない。ともあれラ ンディの多面性がよく分かるアルバムである。
kettle


sail

  Sail Away / Randy Newman (1972)
REPRISE RS 2064 (US)
A-1. Sail Away
2. Lonely At The Top
3. He Gives Us All His Love
4. Last Night I Had A Dream
5. Simon Smith And The Amazing Dancing Bear
6. Old Man

B-1. Political Science
2. Burn On
3. Memo To My Son
4. Dayton, Ohio - 1903
5. You Can Leave Your Hat On
6. God's Song (That's Why I Love Mankind)


Produced by Lenny Waronker and Russ Titleman

普通に聴くと最初の2曲のインパクトが強すぎるので、試しにB面から針を落としてみました。古いポップ・ソングのようなB-1.は「政治学」というタイト ル、「どうせ我々は嫌われてい るのだから“ビッグ・ワン”を世界のあちこちに落としてみてどうなるか見てみよう」などと歌われていますが、ここでいう「我々」は「アメリカ人」の意味で しょう。この歌は、新大陸へむけて出帆せんとする奴隷商人の 「セイル・アウェイ」と対になっているようで、こちらでは「アメリカでは木の上の猿のように人々は幸福で自由だよ」と歌われていて、毒舌とか皮肉とかを 超えた深みを感じます。またB-6.の「神様の歌」もA-3.と呼応しているような内容ですが、これらを聴いていると、嫌われ者を演じるのが上手と言われ るランディ・ニューマンですら、上から目線の神様には到底かな わないのだな、と思わせてくれます。
A-2.はフランク・シナトラをイメージして作られたといわれる名曲、B-2.は映画「メジャー・リーグ」の冒頭に突然流れてきてビックリした覚えがあり ます。ストリングスの空間処理、A-4.でのライ・クーダーのギターのインパクト等、レニー・ワロンカーとラス・タイトルマンによるサウンド・プロダク ショ ンは完璧の一語に尽きます。
cup


jackie

Breakin' It Up on the Beatles Tour! / Jackie DeShannon (1964) 
r.p.m. RPM 302 (2005 EU)
1. Needles And Pins 2. She Don't Understand Him Like I Do
3. Should I Cry 4. Did He Call Today, Mama?
5. You Won't Forget Me 6. Hold Your Head High
7. When You Walk In The Room 8. The Prince
9. Oh, Boy! 10. He's Got The Whole World In His Hands
11. It's Love Baby (24 Hours A Day) 12. Over You

13. Til You Say You'll Be Mine 14. I'm Looking For Someone To Love
15. Mean Old Frisco 16. Today Will Have No Night(
17. Give Me A Break 18. Maybe Baby
19. Try To Forget Him 20. Breakaway

Produced by DICK GLASSER




ランディ・ニューマンの60年代の楽曲については最近になってCDにまとめられているみたいですが、こちらジャッキー・デシャノンのセカンド・アルバム本 編には2.、4.、6.と3曲のランディの作品が収められています。いずれもがジャック・ニッチェの奥行きのあるアレンジに彩られていますが、ボレロ風な リズ ムに雄大なストリングスが絡む6.が特に耳に残る出来、この曲はジャッキーさんとの共作。やはり共作の2.はミディアム・スロー、アレンジではガット・ギ ターらしき音色が印象に残ります。ランディ一人のクレジットがある4.は少し軽めのR&B、といったところでしょうか、当然ながら後のシンガ・ソ ン グライター的楽曲とはタイプが異なり、職人的ソングライターとしての資質が前面に出ている感じです。アルバム後半は不朽の名作7.で始まりますが、エコー の奥に響くカスタネット等、同時期のスペクター/ニッチェのサウンドそのままといった感じ。バディ・ホリーの9.、アラントゥーサンの12.など、アルバ ム・タイトルどおり英国ビート・グループに寄り添った選曲/演奏になっています。
cup


born

Born Again / Randy Newman (1979)
  Warner Bros. HS 3346 (US)
A-1. It's Money That I Love
2. The Story Of A Rock And Roll Band
3. Pretty Boy
4. Mr. Sheep
5. Ghosts
6. They Just Got Married

B-1. Spies
2. The Girls In My Life (Part 1)
3. Half A Man
4. William Brown
5. Pants

Produced by Lenny Waronker and Russ Titleman
    

『小さな犯罪者』のヒットで調子に乗ったランディさん、目を$マークに縁取りしたKISS風メイクで堂々のジャケット登場です。デスクに飾られた家族写真 も同じメイクになっているのが大爆笑ですが、前作に続きアンディ・ニューマーク/ウィリー・ ウィークスがサポート、シンセを大量導入した内容は充実しております。改めて見てみると'87年のベスト盤にはこのアルバムから1曲も選ばれていないこと もあって、突出した曲はないのですが、その分「高度資本主義社会の下でのアメリカン・ライフの悲喜こもごも」というテーマがはっきりと打ち出されているよ うでもあります。キンクスの名作『ソープ・オペラ』のアメリカ・ヴァージョンといった位置付けでしょうか。まぁA-4.の登場人物のような従順なサラリー マンが、ひとたびブチ切れるとB-5.の酔っ払いのように手が付けられなくなる、というような光景は我々の周りでも頻繁に目するところではありますが。蛇 足ながらランディさんは歌の中にジャクソン・ブラウンやブルース・スプリングスティーンなど有名ミュージシャンを登場させることがありますが、A-2. はその先駆け、当時ヒットを放っていたELOが俎上に上がっております。
kettle


badlove

Bad Love / Randy Newman (1999)
  DREAMWORKS DRMD 50115 (US)
1. My Country
2. Shame
3. I'm Dead (But I Don't Know It)
4. Every Time It Rains
5. The Great Nations of Europe
6. The One You Love
7. The World Isn't Fair
8. Big Hat, No Cattle
9. Better Off Dead
10. I MIss You
11. Going Home
12. I Want Everyone To Like Me

Produced by MITCHELL FROOM and TCHAD BLAKE


もう10年以上も前の作品ですがウチにある中ではいちばん最近のランディの作品、ドリームワークスから発売されていたのかぁ、と改めて認識、時の流れ を感じてしまいます。楽曲の完成度も相変わらずですが、映画音楽を数多く手がけてきた経験からでしょうか、自らのアレンジによるストリングスの効果も含め て温もりのあるハンドメイドな音色が耳に残ります。エレガントなピアノのイントロで始まる9.などドリーミーな無国籍感覚はちょっと新鮮、『はらいそ』 の 頃の細野さんのアルバムを思い出しました。また10.や11.でのピアノの感触は何よりも彼の音楽性を雄弁に物語っているようでもあります。1.はズバリ 「私の 国」、映画音楽的に脚色された5.は16世紀のヨーロッパの歌ということですが、やはりこれも現代アメリカへのステートメントでしょうか、軽みのある洒落 た演奏の12.のタイトルには大爆笑でありました。
cup

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