1968-1972


ここではFairport Conventionでの活動と、その後の英国録音のレコードを御紹介。

1st

Fairport Convention (1968)
POLYDOR 068-291-2 (2003 UK)




1.Time will show the wiser
2.I don't know where I stand
3.If (Stomp)
4.Decameron
5.Jack O' Diamonds
6.Portfolio
7.Chelsea morning
8.Sun shade
9.Lobster
10.It's alright ma it's only witchcraft
11.One sure thing
12.M.1 breakdown

13.Suzanne
14.If I Had
a Ribbon Bow
15.Morning Glory
16.Reno, Nevada

produced by Joe Boyd and Ted Lloyd


CD : POLYDOR 068-291-2 (2003 UK)


マシューズ(このアルバムだけは'Ian Macdonald'とクレジットされている)も参加したFairport Conventionのデビューアルバム。イロイロやっていますが、要するにサイケ、というかJefferson Airplane、なので、曲としてまとまっているのは、半分くらいでしょうか。中ではマ シューズと Judy Dybleのハーモニーが美しいJoni Mitchellの2曲とA-4.あたりが良い出来。Judy DybleさんはSandyとはタイプが違いますがハッとするようなきれいな声、これ1作でFairportを抜けてしまいます(後年Trador Horneに参加)。マシューズは他の曲でも活躍してますが、まだバンドとしてのまとまりが今ひとつなこともあり、個性を出すまでにはもう少しというとこ ろ。
アルバム完了後の録音、CDのボートラ13.あたりになると大分音もこなれてきていま す。同じく14.がバンドのデビューシングル。どうにもヒットしそうにない変わった曲ですが、耳に残ります。
cup
Fairport : Judy Dyble,  Ian MacDonald, Richard Thompson,
Simon Nicol, Martin Lamble, Tyger Hutchings




2nd_us

Fairport Convention (1969)
A&M SP 4185 (US)
A-1. Fotheringay (Sandy Denny)
2. Mr. Lacey (Ashley Hutchings)
3. Book song (IM / Richard Thompson)
4. "The Lord is in this place, how dreadful is this place" (Hutchings / Thompson / Denny)
5. No man's land (Richard Thompson)
6. I'll keep it with mine (Bob Dylan)

B-1. Eastern rain (Joni Mitchell)
2. Nottamun Town (trad. arr. Fairport)
3. Tale in hard time (Richard Thompson)
4. She moves through the fair (trad. arr. Fairport)
5. Meet on the ledge (Richard Thompson)
6. End of a holiday (Simon Nicol) 

produced by Joe Boyd 

What We Did On Our Holidays 
Island PSCD-1124 (1991 JP)


Fairportの2作目、マシューズが在籍した最後のアルバムがこの作品。メインヴォーカルのSandy Dennyとの絡みが抜群の冴えを見せる秀逸な作品だ。
このアルバムの中で僕が一番好きな曲はA-3.。マシューズがリードをとりSandyがコーラスに回る唯一の曲で、マシューズの歌声は雲の上をフワフワと歩いているような、気も遠くなるような浮遊感を感じる曲。
またこの曲以外にもSandyとマシューズとの絶妙な掛け合いが聴ける。'Fotheringay'のかすかなマシューズのバック・コーラスも控えめなが ら、確かな存在感を感じさせるし、B-5.でも二人の個性がガップリ四つに組んで忘れ難い演奏となっている。このアルバムは、マシューズがバンドの一員と して参加した作品の中では最高傑作、と断言してもいいと思う。
kettle

このアルバムからSandy Dennyが加入。初期のゴールデンメンバーが勢ぞろいとなります(メンバーはこの時Sandyのオーディションを行ったのだそうですが、最後には、逆に自分達がSandyにオーディションされているような気分になったそうです)。
ここに掲げたものは、英国盤とはジャケ、タイトルが違う米国盤。
cup
Fairport : Sandy Denny, Ian Matthews, Richard Thompson,
Simon Nicol, Martin Lamble, Ashley Hutchings


southern1

Matthews' Southern Comfort (1970)
DECCA DL 75191 (US)
A-1. Colorado springs eternal
2. A commercial proposition
3. The castle far
4. Please be my friend
5. What we say

B-1. Fly pigeon fly
2. The watch
3. Sweet bread
4. Thoughts for a friend
5. I've lost you
6. Once upon a lifetime

produced by
Steve Barlby and  Ian Matthews

CD : BGO BGOCD313 (1996 UK)

より米国的な音楽を指向するマシューズは、次作"Unhalfbricking"の一曲にゲスト参加、素晴らしいバックヴォーカルを置き土産に、よりトラッドへと傾斜していくこととなるFairportを去ります。
で、これは英国では'69年発表のマシューズのファーストソロ。Sandyを除くFairportの面々がサポートしています(彼等はこの年の5月、ライブの帰り道 に交通事故に巻き込まれ、ドラムスのMartin Lambleが死亡するという不運に見舞われています。このアルバムの録音がその後かどうかは不明)。
Frying Burrito Bros.を聴いてアメリカ西海岸の音楽に接近したマシューズですが、FBBの直接の影響はスティールギターの音色程度、カントリーロック一辺倒というわけでもありません。プロデューサー及びソングライ ターとしてクレジットされているSteve Barlbyというのは、Howard and Blaikleyというプロデュースチーム(ポップス系が得意)の偽名だということで、なるほど耳障りの良いフォーク調の曲が並んでいます。A-2. は本人は録音していないらしいRichard Thompsonの曲。
ここに挙げた米国盤、何故かイギリス盤より1曲少ない(A-6. Dream song、 CDには収録)。
cup


southern2

Second Spring / Matthews' Southern Comfort (1970)
MCA MCA-5050 (JP)

A-1. Ballad of Obray Ramsey
2. Moses in the sunshine
3. Jinkson Johnson
4. Tale of the trial
5. Woodstock

B-1. Blood red roses
2. Even as
3. Darcy Farrow
4. Something in the way she moves
5. Southern comfort

produced by Ian Matthews and Southern Comfort
recorded at Sound Techniques Studios, London 

CD : BGO BGOCD313 (1996 UK)

Ian Matthewsは、前作に参加したMark Griffiths (guitar), Gordon Huntley (steel guitar)に、Carl Barnwell (guitar), Andy Leigh (bass), Ray Duffy (drums)を加えバンドを結成、Matthews' Southern Comfortを名乗って活動します。
こ のアルバム、バンジョーやスティールギターといった楽器を使用していますが、カントリーっぽいのは2曲程度。カントリー的な手法でトラッドを含めた英国 フォークを演奏したアルバム、と言えるでしょうか。メンバーの溌剌としたプレイが印象的な適度に土臭く上品な秀作となっています。リードヴォーカルは (Barnwell作の佳曲B-2.を除き)マシューズが担当していて、アカペラ主体のB-1.など、以後マシューズの作品の基調となるコーラスワークの 素晴らしさも心に残ります。B-4.はオリジナルのJ.T.を凌ぐ出来映え。
こちらの日本盤は英国オリジナル盤に'Woodstock'を追加した仕様。初めて聴いたマシューズの作品でした。
cup


southern3

Later That Same Year / Matthews' Southern Comfort (1970)
PICKWICK SPC-3698 (US) (1979)

A-1. Woodstock
2. To love
3. And when she smiles (She Makes The Sun Shine)
4. Tell me why
5. My lady


B-1. And me

2. Mare, take me home
3. Brand new Tennessee Waltz
4. Road to Ronderlin   

produced by Ian Matthews at Morgan Studios 

"Second Spring"と同一メンバーによるセカンド、なのですが、ここに掲げたものは再発盤で、オリジナル盤から3曲を削り'Woodstock'を加えるという反則盤となっています。オリジナル盤の曲目は、
To love (Goffin / King)
And me
Tell me why (Neil Young)
Jonah (Carl Barnwell)
My lady
And when she smiles (Alan C. Anderson)
Mare take me home (Alan C. Anderson)
Sylvie (Carl Barnwell)
Brand new Tennessee Waltz (Jesse Winchester)
For Melanie (Carl Barnwell)
Road to Ronderlin 

Neil YoungやJesse Winchester等、同時代のソングライターの作品を積極的に採り上げるマシューズの姿勢が、この辺りから顕著になってきていますが、出来はまあ平均的。むしろメンバーの自作 に佳曲が多く、哀愁フォーク的なマシューズの作品とポップなBarnwell作品が新機軸でしょうか。ここから'My lady'がAllan Taylorによってカバーされています。
このアルバムの後、マシューズはグループを脱退、残ったメンバーはSouthern Comfortとして活動を継続します。
cup


myeyes

If You Saw Thro' My Eyes / Ian Matthews (1971)
VERTIGO VEL-1002 (US)

A-1. Desert Inn
2. Hearts
3. Never ending
4. Reno Nevada (Richard Farina)
5. Little known
6. Hinge

B-1. Hinge
2. Southern wind
3. It came without warning (Jacobs / Burnham)
4. You couldn't lose
5. Morgan the Pirate (Richard Farina)
6. Thro' my eyes

produced by Ian Matthews

CD : VERTIGO 514 167-2 (1993 UK)


さて、ここからは怒濤の名作ラッシュです。
バンドを脱退したマシューズが再びソロに転じて放った2nd。自作曲の出来が特に素晴らしく、最高傑作の呼び声が高いのも納得です。シンプルな演奏には落 ち着きがあり、意外と重たいリズムがマシューズの優しく少し頼りなげなヴォーカルとうまくバランスをとっているよう。ギターにはRichard Thompson, Tim Renwick, Andy Robertsという豪華な顔ぶれ、リードはトンプソンとレンウィックが分けあっていますが、それぞれ持ち味を十分発揮したプレイが聴けます。哀愁フォー ク調のB-4.でのトンプソンのアコースティックはなんか凄い。
そしてこのアルバムにはSandy Dennyがキーボードで参加、ほとんど彼女のピアノだけで歌われるラストのタイトル曲では、Fairportを彷佛させる、いやそれ以上の素晴らしい デュエットを聴かせてくれます(これはSandyのボックスセット"A Boxful of Treasures"にも収録されているようです)。
cup


tiger

Tigers Will Survive
/ Ian Matthews (1972)
Vertigo VEL 1010 (US)

A-1. Tigers will survive
2. Midnight on the water
3. Right before my eyes
4. Da doo ron ron
5. Hope you know
6. Please be my friend

B-1. Never again
2. Close the door lightly when you go
3. Unamerican activity dream
4. Morning song
5. The only dancer (Pete Carr)

produced by Ian Matthews

CD : VERTIGO 514 167-2 (1993 UK)
        VERTIGO (UNIVERSAL) UICY-9574 (2005 JP)

マシューズの作品の中では、全体に硬質で少しラフな音作りで、いつもの控えめな印象は少なく、むしろ自信のようなものが伺われる作品です。Quiverの 面々が参加した演奏陣もそれに応え快活で精気のある演奏を展開しています(ちなみにベースのBruce Thomasは、後年アトラクションズに参加)。
アコーディオン担当のWoolfe J. Flywheelは実はRichard Thompsonらしいのですが、少し変わった使い方でイーリアンパイプかバグパイプのような効果を出しています。アコーディオンの使用もそうですが、A-3あたりで はThe Band、それも"Stage Fright"あたりの音を意識したかのような印象も残ります。
楽曲もまた素晴らしく、変化に富んでいて飽きさせません。A-6は1st収録曲の再演ですが、こちらのほうが断然良い。A-4はご存じスペクターサウンド の名曲をアカペラで楽しく聴かせます(一人多重録音?)。この曲米国トップ100に入ったみたいです。Eric AndersonのB-2は、同時代のソングライターのカバーの中でも屈指の出来映えで見事にハマってます。
初めて入手したアルバムなので、個人的には一番好き、というか最高傑作の一枚に挙げたい。
基本的には英国盤と同一仕様ですが、このマーキュリー盤、どういうわけかA面とB面の表記が逆さになってます。
cup


plainsong

In Search Of Amelia Earhart / Plainsong (1972)
Elektra EKS-75044 (US)

A-1. For the second time
2. Yo Yo man
3. Louise
4. Call the tune
5. Diesel on my tail (J. Fagan)
6. Amelia Earhart's last flight (David D. McEnery)

B-1. I'll fly away (Albert E. Brumley)
2. True story of Amelia Earhart
3. Even the guiding light
4. Side roads
5. Raider (Jerry Yester / Judy Henske) 


Produced by Sandy Roberton
Recorded at Sound Techniques Studio, London 


CD : ELECTRA WPCP-4140 (1991 JP)


マシューズとAndy Robertsを中心に結成されたPlainsongの(当時)唯一のアルバム。いわゆるコンンセプトアルバムではないとのことですが、1937年に消息 を絶った女性飛行士アメリア・エアハートに象徴される「失われたものへの憧憬」というテーマがサウンド面からも浮かび上がってきます。硬質なスタイルを持つロ バーツの唄とギターが、全体をビシッと引き締める役割を果たしています。
cup

僕の愛読書に、福永武彦の「風土」という小説がある。芸術家にとって、生まれ育った風土が如何に大切なものか、それが芸術をどんなに規定してしまうものか、という主題を持った小説だ。
マシューズが追い求めている理想の音楽形態が英国と米国との融合点にあるとしたら、この二律背反をどのように表現するのか、その答えが一番良く解るのが、このアルバムであろう。
遅れてやって来たマシューズ・ファンとして、イアンに出会った初めてのアルバムとして、このアルバムは僕の記憶の中で重要な位置を占める事となった。
A-1.の最後の方で、"I was broken, I was broken"(僕は壊れていった、僕は壊れていった)と唄われる、ナイーブな感性がうかがわれるこの曲が、このアルバムのはかなさを象徴していて、何回聴いても印象に残る。
kettle
Plainsong : Ian Matthews, Andy Roberts, Dave Richards and Bob Ronga 


PART 2 : 1973-1980
01TOP
HOME