INTRODUCTION : WOODSTOCK


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Ian Matthews(イアン・マシューズ)というシンガーと我々との出会いは、何と言っても深夜のAMラジオから流れてきたMatthews' Southern Comfortの'Woodstock'、ということになる。1970年頃、英国のヒットチャートで第 1位になったという曲前のコメントを聞いた時は少し不思議な感じがしたものだった。ちょっと前にCSNYのヴァージョンが映画の話題もあって頻繁にオ ンエアされていた時期、何で今頃同じ曲がまたヒットしているのだろう、と思ってしまったのだった。

しかし聴いてみるとその疑問はふっ飛ぶ。同じ曲でもまったくニュアンスが違うことは、高校生の耳でも感じ取れるほどだった。甘いトーンのスティールギ ターによるイントロと間奏、内省的で控えめなハイトーンのヴォーカルに柔らかいコーラスが絡むこの演奏は、どちらかというと挑戦的なスティルスのヴォーカ ル、ギターが印象 的なCSNYの演奏とは対極に位置するものだったからだ。記憶がかなり曖昧で時系列がはっきりしないのだが、 N.YoungやJames Taylorといったシンガーソングライターの曲がラジオで聴けるようになったのは、もう少し後だったことを思うと、この'Woodstock'における演奏はやはりとても新鮮な響きをもたらしたのかもしれない。

随分後になって知ったのだが、この曲、最初はMatthews' Southern Comfortが英国BBCラジオに出演した際に披露されたもので、放送後リクエストが殺到したため急遽シングルリリースされたものだったらしい。日本では そんなに大ヒットではなかったものの、その後数回オンエアされて聴くことができたのだったが、当時は雑誌のレコードレビューを眺める位のことしか出来ずに結局そのままになってしまっていた。

で、数年後、高校時代の友人でとても趣味の良い音楽を聴いていたA君が、中古屋でこの曲が入ったアルバムを見つけてきたというので早速聴かせても らった。このレコードが"Second Spring"、カントリーっぽい楽器構成なのだが、あまりカントリーな感じがしない不思議なサウンドで、とても気に入ってしまった。A君はほぼ同時に Fairport Conventionの2枚組ベスト"The History of Fairport Convention"も入手するという快挙を成し遂げたため、彼のおかげでマシューズとその周辺の英国フォーク/トラッドの魅力を少しだけ垣間見ること ができたのである(蛇足ながら、いわゆる英国トラッドを意識したのはこれが最初ではなく、高校時代にTrafficのファンだった別の友人が聴かせてく れた'John Barleycorn'という曲、これにはタマげた)。

1946年生まれのマシューズは、'68年、ヴォーカリストを探していたAshley Hutchingsと出会いFairport Convention結成に参加、フォークロック的な音楽を展開した2枚のアルバムで、ヴォーカル、ギター、作曲に活躍する。独立後はFairportの面々とも交流を保ちつつ、ソロ活動 と並行してバンド活動をも展開、特に'70年から'72年までの間には、3枚のソロアルバム、Matthews Southern Comfortでの2枚、Plainsongと非常に精力的なレコード制作を行っている。
1973年以降アメリカに渡ってからも順調にソロ活動を続け、'80年までほぼ1年1作のペースでアルバムを発表していく。また活動休止後の1990年代 から現在までは、名前の綴りを(ゲール語の表記)Iain Matthewsに改め、以前にも増して精力的な活動を続けている。
今回は主に1980年までのマシューズのレコードを聴き返しながら、その足跡を辿ってゆくことにする。

Official Homepage
http://www.iainmatthews.com/
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PART 1 : 1968-1972
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