ACADIAN DRIFTWOOD

早くもまたハリケーンの季節になってしまいましたが、ニューオリンズの現状は未だ復興の途上にあるらしく(というか端緒についたばかり)、被害家 屋が10万戸以上、学校、病院の2.3割しか使えず、結果多くのミュージシャンも含め約30万の人口が減ってしまっているそうです。堤防もまだ修復途上と のことなので今後のことも含めて心配になります。
それにしても解せないのは、これほどの災害でも復興事業の主体は州や郡政府で、連邦政府は多少の資金は出すものの積極的に支援していないようだ、という点。一体どーなってるん?戦争なんかやってる場合かよ〜、と誰しもが思うことでしょう。
とりあえず気を取り直して、ルイジアナ周辺の(およびルイジアナゆかりの)音楽のご紹介。

clifton1

BON TON ROULET / CLIFTON CHENIER (1967)
ARHOOLIE F1031 (US)
A-1. Bon Ton Roulet
2. Frog Legs
3. If I Ever Get Lucky
4. Black Gal
5. Long Toes
6. Baby Please Don't Go

B-1. Ma Negresse
2. Sweet Little Doll
3. Jole Blonde
4. Ay Ai Ai
5. Can't Stop Loving You
6. Keep on Scratching

RECORDED BY CHRIS STRACHWITZ


これはある意味、ジャケ買いでした。ルイジアナ/テキサス周辺のZydecoと呼ばれる音楽だということは聴いた後に判明した次第で、とにかくケイジャ ン・フレンチの節回しとアコーディオンの生音が強烈な冒頭のブルースには度肝を抜かれてしまいました。今聴くとバックはギターやピアノも入ってオーソドッ クスなものもあるのですが、そこにチューニング大丈夫かよ的なフィドルの音色が現れたりすると、さらに湿度も高まりインパクトが強くなります。B面はケイジャン・スタ イルの曲が多くなりますが、曲調の違いなど一切意に介することなく堂々たる演奏が続きます。この時期のアーフリーでの録音はどれも強烈ですが、50年代の録音では割と普通のR&Bもやってるみたいです。
cup


swamp

SWAMPWATER (1971)
RCA LSP-4572 (US)
A-1. Ooh-Wee California
2. Headed for the Country
3. Ol' Papa Joe
4. Mama Lou
5. A Song I Heard
6. One Note Man

B-1. Back on the Street Again
2. Dakota
3. Gentle Ways of Lovin' Me
4. Back Porch Harmony
5. Medley : Swampdown, The Merry-Go-Round Broke Down

PRODUCED BY LARRY MURRAY

ロニー・ウッドの名演でも知られる'Big Bayou'が有名なケイジャン・ロックのスワンプウォーターですが、こちらはセカンド。ギブ・ギルボーの卓越したフィドルが全体のバイヨー・ムードを盛 り上げますが、西海岸フォークロック風なコーラスが新鮮なA-2.やA-6.(どちらもバーズみたい)や叙情的なA-4.などワンパターンにはまっていな いのはプロデュースの勝利でしょうか。スティール・ギターなどのゲストも多彩ですが、全体の音作りが南部らしい温かさを感じさせるのも好印象です。木の 皮がベロンとむけるようにメンバーの写真が現れる変形ジャケットには、当時一緒にツアーをやったらしいアーロ・ガスリーのコメントが寄せられています。
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eva

Evangeline Made: A Tribute to Cajun Music (2002)
Vanguard 79585-2 (US)
1.Vagabond Special
2.La Chanson d'une Fille de Quinze Ans (Linda Ronstadt & Ann Savoy)
3.Diggy Liggy Lo (John Fogerty)
4.Je Veux Plus Te Voir (Linda Thompson)
5.Pa Janvier, Laisse Moi M'en Aller (Patty Griffin)
6.Les Flammes d'Enfer (Richard Thompson)
7.Ma Mule (David Johansen)
8.Ma Blonde Est Partie (Maria McKee)
9.Blues de Bosco (Rodney Crowell)
10.O, Ma Chere 'Tite Fille (Linda Ronstadt & Ann Savoy)
11.Valse de Balfa (Linda Thompson)
12.Two Step de Prairie Soileau
13.Arrette Pas La Musique (Nick Lowe)
14.Tout Un Beau Soir en me Promenant (Maria McKee)

PRODUCED BY ANN SAVOY

フィドルやアコーディオンを中心としたケイジャン・オールスターズと演奏に英米フォーク/ロックの面々の歌やギターが心地良く調和したトリビュート盤。い かにもケイジャンなダンス・チューンからワルツ、ブルース、(ちょっと英国トラッド風)バラッドまで幅広い選曲となっていますが、そのほとんどがフランス 語で歌われています。美しい二重唱の2.ではリチャード・トンプソンのリードギターも入って奇しくも「リチャード&リンダ」の演奏が聴けますが、そのリ チャードの弾き語り6.では豪放かつ緻密な演奏が堪能できます。一方のリンダ・トンプソンの歌う11.は、ブルースがワルツになったような不思議なメロディで す。全体にギターの音色が美しいのが印象的ですが、録音にはヴィンテージものも使用されているようで、思わずギブソンのカタログを引っ張り出して見入ってしまいました。サニー・ランドレスも2曲で参加。
エヴァンジェリン、何とも美しい響きですが、ルイジアナの行政区の名称であると共に、アケイディアンの長編物語詩に登場するヒロインの名前でもあるそうです。
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ngdb

All the Good Times / The Nitty Gritty Dirt Band (1971)
UNITED ARTISTS UAS-5553 (US)
A-1. Sixteen Tracks
2. ish Song
3. Jambalaya (On the Bayou)
4. Down in Texas
5. Creepin' 'Round Your Back Door
6. Daisy

B-1. Slim Carter
2. Hoping to Say
3. Baltimore
4. Jamaica, Say You Will
5. Do You Feel It Too
6. Civil War Trilogy
7. Diggy Liggy Lo

PRODUCED BY WILLIAM. E. MCEUEN

"Evangeline Made"でのジョン・フォガティの歌を聴いて思い出したのがこのアルバム。最終曲の活きのいいライブ演奏で馴染みだったのでした。ケイジャンと言えばもう1曲、当時 よくラジオでかかっていたA-3.も演ってますが、どちらもフィドルの演奏が素晴らしい。このバンドのメンバーは皆マルチプレイヤーなのでどなたが弾 いているのかはっきりとはわかりませんが、ジャケットでフィドルを抱えているのはジョン・マッキューエンさんです。今回久々に聴いてみたのですが、A-4.はエディ・ヒントン作品だったことを初めて知りました。元メンバーの作品B-4.もグッときました。
cup


brown

Bogalusa Boogie Man / Clarence 'Gatemouth' Brown (1975)
Maison De Blues 983 262-4 (2006 FR)
1. Bogalusa Boogie Man
2. Mama Mambo
3. Monroe Louisiana
4. Aztec Flower
5. Hurricane
6. Bayou Stomp
7. Dixie Chicken
8. On My Way Back Home
9. Amos Moses
10. Fiddlin' Around
11. Birmingham
12. After The Band Is Gone
 
13 Don't Get Around Much Anymore, 14. Flyin' Home
15. Caldonia, 16. Someday
17. Okie Dokie Stomp

PRODUCED BY PHILIPPE  RAULT


幅広い音楽をテキサス・スタイルで演奏するブルースマン、という話だけは聞いていましたが、フランスのバークレーというレーベルに残した本作品は、スワン プ/ケイジャンの雰囲気が濃厚。ギターをフィドルに持ち替えての土臭くリラックスした演奏が聴こえてきます。ほとんどが地元のライターによる作品とのことです が、どれもが佳曲でスティールギターの響きも心和みます。
'Dixie Chicken'ではKarl Himmelの叩く純正セカンドラインにのって朴訥な歌とファンキーなフィドルを聴かせてくれますが、最後のコーラスで"We can walk together"を"We can live together"と言い換えて歌うところなどいかにも地元のミュージシャンならでは、と思わせます。また(カトリーナの直後に他界されたことを考える と)「メキシコ湾にレディがいるよ」と始まるスワンピーな5.を聴く時、今となってはちょっと複雑な思いがよぎってしまいますね。ちなみに1.と7.は2001年、サニー・ランドレス等を伴って再演されています。
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maria2

Louisiana Love Call / Maria Muldaur (1992)
SHOUT DK 34343 (2005)
1. Second Line
2. Best of Me
3. Louisiana Love Call
4. Cajun Moon
5. Creole Eyes
6. lues Wave
7. Dem Dat Know
8. So Many Rivers to Cross
9. Don't You Feel My Leg (Don't You Get Me High)
10. Layin Right Here in Heaven
11. Without a Friend Like You
12. Southern Music

PRODUCED BY HAMMOND SCOTT

完璧にコントロールされているの にライブ感を失わない歌声が素晴らしい。ネヴィル兄弟を従えてのセカンドライン、ドクターの艶っぽく転がるピアノとさりげなく寄り添うようなヴォーカル、 エイモス・ギャレットのユルく揺蕩うギターも夢見心地なカントリー・スタイ ル、と冒頭の3曲を聴いて早くもマリア様の最高傑作かもしれないと思ったその印象はラストまで全く裏切られないのでした。再演されたJ.J.ケイルの名曲 4.も艷っぽく衣替え、あまりの心地よさに思わず"Don't stop"の掛け声も聴かれます。2.のクレジットには懐かしいラッセル・スミスの名前も。すべての人が幸せになれるアルバムかもしれません。
cup


kate

PRONT0 MONTO / Kate & Anna McGarrigle (1978)
WARNER BROS BSK 3248 (US)
A-1. Oh My Heart
2. Side of Fries
3. Just Another Broken Heart
4. NA CL
5. Pronto Monto
6. Stella by Artois

B-1. Bundle of Sorrow.
Bundle of Joy
2. Come Back Baby
3. Tryin' to Get to You
4. Fixture in the Park
5. Dead Weight
6. Cover Up My Head

PRODUCED BY DAVID NICHTERN

ケイト&アンナはフレンチ・カナディアンの姉妹ソングライター/デュオ、優雅で古風なメロディを作り歌います。まあ古風な、とはいってもフレンチ・カナディアン の伝統音楽とどう関わっているのか比較するものが見当たらないのでアレなんですが、プチ魔女系の歌声の妙とも相俟ってミステリアスな雰囲気を醸し出してい ます。'78年のこのアルバムは割と米国ポップ音楽寄りのアレンジが施されているせいかマリア・マルダーの雰囲気にも似たシットリ感があります。 スティーブ・ガッドやジェリー・ドナヒューらが参加。
そういえば子供の頃、たまたま近所にアコーディオン好きのフレンチ・カナディアンっぽいオジさんがいまして、その方がデカいアコーディオンを抱えて何度か演奏しているのを見かけたことがありました。今思えばもっとちゃんと聴かせてもらえば良かったかなぁ。
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DOWN IN DIXIELAND

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