DOCTOR & PROFESSOR

ニューオリンズの紅燈地区に出入りするピアノ弾きは昔から「教授」とあだ名されていたそうですが、そんな中の一人プロフェッサー・ロングヘアの ファンキーなピアノ・プレイがニューオリンズの人々を驚かせたのが1949年、その後長い間地元だけで尊敬を集める ミュージシャンズ・ミュージシャン的立場にあった彼の音楽が広く知られるようになったのは、後継者たるドクター・ジョンがアルバム"Gumbo"を出した'70年代のことでした。

dr1

Desitively Bonaroo / Dr. John (1974)
ATCO SD 7043 (US)
A-1. Quitters Never Win
2. Stealin'
3. What Comes Around (Goes Around)
4. Me - You = Loneliness
5. Mos' Scocious
6. (Everybody Wanna Get Rich) Rite Away
 
B-1. Let's Make A Better World
2. R U 4 Real
3. Sing Along Song
4. Can't Git Enuff
5. Go Tell The People
6. Destively Bonnaroo

PRODUCED & ARRANGED BY ALLEN TOUSSAINT

'70年代後半、コレと一つ前の"Right Place, Wrong Time"はカットアウト安売りコーナーの常連で、いつでも聴けるだろうというナメた気持ちがありました。バックを務めているのがミーターズだというこ とを知ってから無くなりかけた頃慌てて入手した憶えがあります。そんなこんなで買った当初はそれほどでもなかったのですが、ルーズで時に波打つような ホーンの響きとかリード楽器のようなベースラインの引き摺るような感じ等、ミーターズ/トゥーサン・ラインのファンク・グルーヴとドクターのダミ声が徐々 に染み込んできたのか、気がつくともうドップリ浸かっているような羽目に。 特筆すべきはループしているような呪術的女声(生声)コーラスのアレンジの妙でしょうか、ドクターのヴォーカルと離れたり近づいたり、時には別のメロディ が重なるといった何ともいえないウネリを作り出していますが、このウネリの中にはトゥーサン本人のヴォーカルも聴こえてきます。
B-1.はレヴォン・ヘルムのRCOオールスターズによるカヴァーもありますが、そちらにはガース・ハドソンとロビー・ロバートソンも参加していました。
cup


tango

TANGO  / Dr. John (1979)
HORIZON SP-740 (US)
A-1. Keep That Music Simple
2. Disco-Therapy
3. Renegade
4. Fonky Side

B-1. Bon Temps Rouler
2. Something You Got
3. I Thought I Heard New Orleans Say
4. Tango Palace
5. Louisiana Lullabye

PRODUCED BY TOMMY LI PUMA and HUGH McCRACKEN




LA録音によるホライズンレーベルからの2作目。ニューオリンズ・ビートを基調としていることには変わりありませんが、曲調やリズムの展開がより多彩になりクールでお洒落な雰囲気を演出しているかのようです。「香港ブルース」を思わせるA-3.やB-1.で使われる
マ リンバは妖しくも楽しいチャンキームードを盛り上げていますし、今回はきれいなお姉さん系、の女性コーラスも多くの曲で華やかな彩りを添えています。総じ てB面のほうがニューオリンズっぽいでしょうか。哀愁路線から曲調がファンキーに転換していくB-4.でのセカンドライン風タンゴ・ビートを叩き出すのは名人スティーブ・ガッド。お馴染みのコロコロと気持ち良く転がるピアノ・プレイも堪能できます。
cup


creole

CREOLE MOON / DR. JOHN (2001)
EMI 7243 5 34591 2 3 (EU)
1.You Swore
2.In the Name of You
3.Food for Thot
4.Holdin' Pattern
5.Bruha Bembe
6.Imitation of Love
7.Now That You Got Me
8.Creole Moon
9.Georgianna
10.Monkey and Baboon
11.Take What I Can Get
12.Queen of Cold
13.Litenin'
14.One 2 A.M. Too Many

PRODUCED BY MAC REBENNACK

どんどんよく鳴る法華の太鼓、じゃあないけれど、ドクターによる21世紀仕様セカンド・ライン・マジックはサルサ/カリプソからアフリカにまでま たがる豪華 にして壮大、LPだと2枚組規模の大作にも拘らず大変心地良いお洒落作品となっています。トゥーサンのセッションでも名前を見かけるリズム隊は鉄壁、 ニューオリンズの匂いを発散しつつも多彩なリズムを紡ぎ出し、変幻自在のキーボードは時に妖しく時にファンキーにキメまくっています。もちろん教授風の リズムを借用した7.や、JB風ギター・カッティングにフォンクなハモンドが絡む3.など先達への敬意も忘れていません。 ネタバラシ系の本人による各曲解説も楽しめます。ここにおいて「ケイジャン・サンタナ」の称号を得たサニー・ランドレスのソロがもうちょい聴きたかった、 とい うのが唯一の心残りか。
cup


pro1

Crawfish Fiesta / Professor Longhair (1980)
ATLAS LA23-3002 (JP)
A-1. Big Chief
2. Her Mind Is Gone
3. Something on Your Mind
4. You're Driving Me Crazy
5. Red Beans
6. Willie Fugal's Blues
 
B-1. It's My Fault Darling
2. In the Wee Wee Hours
3. Cry to Me
4. Bald Head
5. Whole Lotta Loving
6. Crawfish Fiesta

PRODUCED BY BRUCE IGLAUER, ANDY KASLOW and ALLISON KASLOW

ドクターもギターで助っ人に駆けつけたフェスの遺作、にしてタイトル通りの超ハッピーなアルバム。ロールしていたかと思うと急に引っ掛かり気味に リズムが止まってしまうような錯覚に陥るマジカルなピアノさばきとヒョーキンヴォイスは変幻自在に冴えわたり、それにつられたバンド共々ノリにノった演奏 が展開されています。A-1.やB-2., B-4.といったおハコの曲はもとより、ユーモラスなギター・リフとラテン・ビートに揺られつつも心地良く脱力していくB-3.でのヴォーカルなどを聴い ていると、この人はもうどこの国の人でもないのだという感覚に襲われてしまいます。きっと天国でも、本業であるカード・プレイの合間にA-6.のようなピアノ・ソロをコロコロと奏でてみんなを楽しませていることでしょう。
cup


huey

Having a Good Time / Huey "Piano" Smith
ACE (Vivid) VS-1006 (1979 JP)
A-1. Rockin' Pneumonia and the Boogie Woogie Flu
2. Little Chickee Wah Wah
3. Little Liza Jane
4. Just a Lonely Clown
5. Hush Your Mouth
6. Don't You Know Yockomo
 
B-1. Havin' a Good Time
2. Don't You Just Know It
3. Well I'll Be John Brown
4. Everybody's Whalin'
5. High Blood Pressure
6. We Like Birdland



いかにも50年代ニューオリンズ、といった楽しい宴会ソングの数々を聴かせるヒューイ・スミスですが、ドクターは"Gumbo"でA-3.、B- 2., 3., 5.をカヴァーしてますね。すぐ憶えてしまえる掛け合いのメロディもそうですが、何故か我が国の宴会ビートの手拍子がピタリとはまるのも親しみやすい理由で しょうか、ときどきTVCMなんかでも使われています。
B-5.は"Gumbo"以外にもジェフ・マルダーが、「ロッキン肺炎にブギウギ・インフルエンザ」は ジョニー・リヴァースなんかもやっていました。
cup


bobby

BOBBY CHARLES (1972)
BEARSVILLE (CBS SONY) 20AP 1987 (1980 JP)
A-1. Street People
2. Long Face
3. I Must Be in a Good Place Now
4. Save Me Jesus
5. He's Got All the Whisky
 
B-1. Small Town Talk
2. Let Yourself Go
3. Grow Too Old
4. I'm That Way
5. Tennessee Blues

PRODUCERS : BOBBY CHARLES, RICK DANKO, JOHN SIMON

木に寄りかかって犬と戯れるジャケットの写真は心和む風景で、ジャケ裏には西瓜にかぶりついているボビーが写っている。西瓜といえばJTの兄貴、Alex Taylorが出したアルバムの表紙も西瓜を食べているAlexが写っていたのをを思い出し、Guy Clarkの"Old Friends"というアルバムの'Watermelon Dream'という曲が頭の中で鳴り出して、そのアルバムをさっき聴いたところだ。
話がそれてしまったが、このアルバムは(説明する必要もないと思うが)'70年代前半のウッドストッカー達が発表した色々なアルバムの最高峰をゆくアルバ ムだろう。A-3.やB-5.を聴いているとボビーのリラックスした心の中が見えるようだ。'Tennessee Blues'でAmos Garrettのギターが鳴り出しGarth Hudsonのアコーディオンが絡んでくると、桃源郷にいるような心穏やかな心持ちになってくる。
kettle

FIYO ON THE BAYOU

04TOP
HOME