WASHITA PRODUCTIONS

個性的なギタリスト/シンガーとして知られるジェシ・エド・デイヴィス、派手なパフォーマンスを行なうわけではない彼の場合、特に日本での人気が高いのは何故なのかツラツラと考えてみると、やはり映画「コンサー ト・フォー・バングラデシュ」の公開時期と関係ががあるのかもしれません。英米ミュージシャンの動く姿を見る機会が非常に限られていた1972年当 時、ジョージやクラプトンと共に長時間に亙って演奏する姿を日本の青少年が目にすることが出来た数少ないギタリストがジェシだったわけで、単純に、スゴイ 人だ、というイメージが最初にインプットされたとしても不思議ではなかったでしょう。もちろん彼の作品自体に接するのはずっと後のことだったわけですが。
さて、'70年代に3枚のソロ・アルバムを発表したジェシですが、同時期プロデューサーとしても良質な作品を送り出し ていたのでした。

ululu

Ululu / Jesse 'Ed' Davis (1972)
ATLANTIC P-8257A (JP)
A-1. Red Dirt Boogie, Brother
2. White Line Fever
3. Farther On Down the Road (You Will Accompany Me)
4. Sue Me, Sue You Blues
5. My Captain

B-1. Ululu
2. Oh, Susannah
3. Strawberry Wine
4. Make a Joyful Noise
5. Alcatraz

PRODUCED BY JESSE DAVIS &ALBHY GALUTEN

このレコードの輸入盤はカットアウトなのに何故か値段が少々高めだったので、時折見かけてもなかなか購入に踏み切れずとうとう機会を逸してしまい ました。しかし有り難いことに当時のワーナー・パイオニアはこの「ウルル」を含むジェシの作品を廃盤にせず長期間流通させてくれていたので、随分後になっ ても入手することが出来ました。
このセカンド・アルバムが多くの人にとって特別なのは魂のこもったプレイももちろんですが、音の質感そのものに独特の響きがあるように思います。エンジニアの一人、 Joe Zagarinoという人からジェシは多くのものを学んだそうですが、これ以上ないくらいに野太いリズムとそれを切り裂くようにグッと前面に出てくるスラ イドギターの唯一無二の感じはこの方の秘技でしょうか。
引き摺るようなA-1.のリズムギター、エルモア・ジェイムスがカントリー弾いてしまったかのようなB-2.、レオン・ラッセルのピアノが美しいA-5.、夕 焼け楽団の日本語ヴァージョンも懐かしいB-2.、御馴染ドクター・ジョンも登場のファンキーなB-3.などなど、ジェシ本人は当時ジャンキーで、友人にお金を 借りまくっていた人だったとは思えない完成度でした。
cup


jesse1

JESSE DAVIS (1970)
ATLANTIC P-8024A (JP)
A-1. Reno Street Incident
2. Tulsa County
3. Washita Love Child
4. Every Night Is Saturday Night

B-1. You Belladonna You
2. Rock & Roll Gypsies
3. Golden Sun Goddess
4. Crazy Love

PRODUCED BY JESSE EDWIN DAVIS, III

こちらはロンドンとL.A.で録音されたファースト・ソロ・アルバム。ルーズでファンキーな冒頭曲とギター・リフのカッコよいパメラ・ポーランド 作品のB-2.だけでジェシの魅力満載ですが、A-3.では客演のクラプトンによる流麗なギター・ソロも展開されます。少ない音数と絶妙 の間合いで一音一音に気持ちを込めて奏でるジェシのギターは、クラプトンのそれとは好対照です。そんな彼の特色あるギターはB-2.(ロジャー・ティリソン作品)のイ ントロなど短いフレーズで曲の情感を弾き出します。珍しくボサノヴァ・タッチのB-3.ではアレサの小さな願いから引用されたコーラスにシタール風ギター も絡む御洒落ぶり。
ジャケットのイラストは御父上のデイヴィス2世による作品。
cup


keep

Keep Me Comin' / Jesse 'Ed' Davis (1973)
EPIC KE 32133 (US)
A-1. BIG DIPPER
2. SHE'S PAIN
3. WHERE AM I NOW (WHEN I NEED ME)
4. NATURAL ANTHEM
5. WHO PULLED THE PLUG?

B-1. CHING, CHING, CHINA BOY
2. BACON FAT
3. NO DIGA MAS
4. 6:00 BUGALU
5. KEEP ME COMIN'

PRODUCED BY JESSE "ED" DAVIS

エピックからの3作目も相変わらずタフで御機嫌なスワンプ・サウンドですが、女声コーラスやホーンも入って若干賑やかな感じ。ギターソロも割と多め みたいなんで、通常仕様のジェシのギターを聴くのにはコレも良いかもしれません。冒頭のインストからして弾きまくり気味ですが、A-4.ではイントロのリフを何回か やり直しているので、レズリーの効かせ具合が仔細に確認できる仕掛けになっています。珍しくカントリー・ワルツなA-5.ではドブロっぽいスライドも披露 してますが、ウッド・ベースの音色にも耳が反応してしまいます。ファンキーなB-1.やケルトナーのハイハットさばきが美しいB-5.など名曲でしょう。
このレコード、確か初回盤にはオマケに7インチEPが付いていたように記憶していますが、こちらは残念ながら未聴です。
cup


roger

Roger Tillison's Album (1971)
ATLANTIC P-7604A (JP)
A-1. Down In The Flood
2. Old Cracked Looking Glass
3. Good Time Gal
4. Just Before The Break Of Day
5. Yazoo City Jail

B-1. Let'em Roll Johnny

2. One Good Friend
3. Lonesome Louie
4. Old Santa Fe
5. Get Up Jake
6. Loving You Is Sweeter Than Ever

PRODUCED BY JESSE DAVIS

'80年代に中古盤でこのアルバムを手にしたのだけれど、A面1曲目のディラン作品が聞えてきただけで、コリャ駄目だ、と思ってしまい、確か1回 聴いただけでそのままになってしまった。ところが20年以上経って(何がそうさせたのかは忘れたが)ふと思いついてこのアルバムをターンテーブルに載せて みたところ、あーら不思議、これはなかなかいいんじゃないか、と思って、それからはたまに聴くようになった。
今回聴き直してみてジェシのプロデュースに感服した。控え目でいて全体を通して聴くとなかなか味わいが深い。どうしてもライ・クーダーと比べてしまうが、 ライの方は結構出たがり屋、目立ちたがり屋な感じがするのに対して、 ジェシの方は裏方に徹して奥の方に引っ込んでいる感じがする。なのにジェシのプロデュースだとすぐに解ってしまうのがスゴい所だろう。
kettle


gene

Gene Clark (1972)
A&M SP 4292 (US)
A-1. The Virgin
2. With Tomorrow
3. White Light
4.Because Of You
5. One In A Hundred

B-1. Spanish Guitar
2. Where My Love Lies Asleep
3. Tears Of Rage
4. 1975

PRODUCED BY JESSE DAVIS

このアルバムもロジャー程ではないしても、最初聴いた時にはフーこんなものかと左から右に流して聴いてい た。ところが何年か聴いているうちに、これは良いアルバムだと思うようになった。ロジャーの場合はスワンプ色の濃さが(個人的に)問題だったけれど、ジーンの方は アコースティック色の強さがある分だけ聴きやすいところがあり、冒頭の'The Virgin' でギターとハーモニカが聞えてくると何とも言えない切ない気持ちになる。
ジェシのプロデュースはスルメを食べていると味が分かるようにジワジワと心に染みてくるよう、何気ない感じでこちらに伝わってくるみたいだ。このアルバム はA面が大好きになりB面はほとんど聴いてこなかった。今回B面も聴いてみたけれど、こちらもなかなかのもので並ではないなと恐れ入った。
kettle


jim

Out The Window / Jim Pulte (1972)
United Artists UAS-5579 (US)
A-1. All Uphill From Here
2. Anything
3. My Heart's On Seet Rollene
4. Cry, Sing And Laugh
5. Point Me Home

B-1. The Goose Flew Back
2. Reno Street Incident
3. Big Times
4. Old Time Junkie
5. Out The Window

PRODUCED BY JESSE "ED" DAVIS and JIM PULTE

この人もカットアウト・コーナーの常連組だったので良く知っているような気になっていましたが、どうゆう人かまったく情報がないことに今頃気付き ました。おそらくソロ・アルバムは2枚だけではないでしょうか。で、こちらのファーストはノーマン・シーフ・デザインのジャケットに包まれたレイドバックし た逸品。ジェシ作品を採り上げたB-2.(ドクター・ジョンも参加)とかノリの良いA-3.などスワンプ風味もありますが、全体としては何々風というので はない一風変わった展開の曲調とほのぼのとしたヴォーカルが心に残ります。ケルトナー、リー・スクラーのリズム隊を中心にした演奏はファンキーかつ程よく 倦怠していて、仄かに明るい個性的な音を奏でます。ジェシ以外のギタリストの参加はないみたいなので全編彼のギターが堪能できます。A-4.ではレズリー の効きがいつもより強め。少し長めのソロが聴けるB-2.はうれしい。
ちょっとガツッとくるものがなかったので最初あまり気に入っていなかったのですが、聴けば聴くほど味の出てくるスルメ的作品であります。
cup


jesse04

a.k.a. Grafitti Man / John Trudell / Jesse Ed Davis (1986)
THE PEACE COMPANY TPC-5158 (US)
A-1.1. Rich Man's War
2. Lavenders Blues
3. New Old Man
4. God Help And Breed You All
5. Stardreamer Woman

B-1. Grafitti Man
2. He Said She Said
3. Baby Boom Che'
4. Silent Lightning
5. Shaman (Make A Chant)


PRODUCED BY JESSE ED DAVIS and RICK ECKSTEIN

おそらくカセットのみで発表された作品。John Trudellさんという人のポエトリー・リーディングにジェシがバックをつけたという趣向の作品ながら、曲調に変化があり(ドラムは打ち込みっぽいですけど) 音楽的にもなかなか聴き応えのあるものとなっています。ジェシのギターは相変わらず切れ味鋭く全編に響き渡っていますが、A-1.やB-1.のスワンプ感 覚はやはり真骨頂、A-4.では必殺のイントロでグッと心を捉まれます。今回はキーボードでも大活躍のジェシさんですが、ちょこっとだけヴォーカルも披露 していてファンには嬉しいところ。
ジョンさんのクレジットは"Spoken Words"となっていて余計な装飾を排したシンプルなもの。内容は残念ながらあまり聴き取れませんが、反戦、反核などメッセージ性の強い作品かもしれません。ジャクソン・ブラウンに謝意が表されています。
cup

TAJ MAHAL

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