SLIM CHANCE

多発性脳脊髄硬化症という難病のために1997年6月4日に亡くなったロニー・レイン、長い闘病生活のためソロ活動の時期はそれほど長いとはいえ ませんでしたが、そんな中で自らの心象風景を完璧に表現できた希有なミュージシャンだったような気がします。初期の頃にはBruce RowlandsやGallagher & Lyleといった人々も参加していたバンド、Slim Chanceと共に、ルーツミュージックに敬意を表しつつ彼独自 の音楽を(さりげなく)究めていった姿は彼の遺したレコードに刻まれ、永遠に色あせることはないでしょう。

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Ronnie Lane's Slim Chance (1975)
A&M SP-3638 (US)
A-1. The Poacher
2. Stone
3. Bottle of Brandy
4. Street Gang
5. Anniversary
6. I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself a Letter
7. Little Piece of Nothing

B-1. Brother Can You Spare A Dime
2. Ain't No Lady
3. Blue Monday
4. Give Me a Penny
5. You Never Can Tell
6. Tin and Tambourine

PRODUCED BY RONNIE LANE

ロニーとの出会いはこの米国盤セカンドだったのですが、一応フェイセスの元メンバーという認識は持っていたので、A-1.の小ぶりなストリングスとハイトーンな歌声が聞こえてきた時はちょっとびっくりしたものです。
ロック&ロールのB-3., B-5.とかビング・クロスビーのB-1. 等このアルバムは比較的アメリカ音楽のカヴァー曲が多めで一曲一曲がくっきりした色合いを持ってはいますが、ルーツ音楽探究といったような趣はなく、街角 で鳴っていた音楽を街の喧騒共々深く呼吸する内に自然に沸き上がってきた、とでもいうような瑞々しさに溢れています。またマンドリン/アコーディオンの奏 でる裏メロディが郷愁を誘うB-4.や、ミュージック・ホールの雰囲気を湛えたA-7.などのオリジナル作品は、正に英国都市音楽の名品でしょう。ユル〜い ラテン/スカ・ビートを持ったインスト曲A-4.なんかはいかにもストリート・ミュージック的雰囲気を持っています。
この米国盤は英国盤と曲目が違うようで、2曲がシングル曲と入れ替えられているみたいです。英国ではシングル発表のB-1.はショート・ヴァージョンで収録。
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Anymore For Anymore
 / Ronnie Lane & The Band 'Slim Chance'
(1974)
GM GML 1013 (UK)
A-1. Careless Love
2. Don't You Cry for Me
3. Bye and Bye (Gonna See the King)
4. Silk Stockings
5. The Poacher

B-1. Roll on Babe
2. Tell Everyone
3. Amelia Earhart's Last Flight
4. Anymore for Anymore
5. Only a Bird in a Gilded Cage
6. Chicken Wired 

PRODUCED BY RONNIE LANE, GLYN JONES

CD : WAVE EVA 5006 (JP), NMC Pilot 15 (1997 UK)

このレコードがリリースされた当時(多分僕が大学に通っている頃だった)、輸入楽譜を取り扱っていた渋谷のヤマハでハッピー・トラウムが編集 した"Blues Bag"というソングブックを買ったのだが、その本にこのアルバムの冒頭に歌われる'Careless Love'が入っていた。この一曲を聴いた途端当時の想い出が一挙に溢れ出してきたことを憶えている。このアルバムで歌われる曲は最後の一曲を除いてどれ もが甘く切なく哀愁を帯びたもので、セピア色に映ったジャケット写真のように郷愁を誘うものだ。
'75年にリリースされたThe Oldham Tinkersというバンドの"For Old Time's Sake" (Topic 12TS276) というアルバムがあるけれど、(ロニーがロック版、大人版だとすると)こちらは純粋なフォーク版、子供版といえるような英国的な相通ずるものが あると思う。フォーク・トラッドが好きな方は探してみる価値はあるでしょう。
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One for the Road / Ronnie Lane's Slim Chance (1976)
ISLAND HI-1003 (1989 JP)
1. Don't Try & Change My Mind
2. 32nd Street
3. Snake
4. Burnin' Summer
5. One for the Road
6. Steppin' & Reelin'  (The Wedding)
7. Harvest Home
8. Nobody's Listenin'
9. G'morning

PRODUCED BY RONNIE LANE

同じメロディ、リズムを繰り返しつつ徐々に盛り上げていく演奏スタイルがロニーの得意技の一つのようですが、ここでもロック&ロール的ノリにフィ ドルガ絡む6.やフォーク・ブルースの3.などでそれを聴くことが出来ます。すべてオリジナルで固めたこの3作目、ホーンが使われなくなったり電気ギター が聴こえるのが1曲だけだったりと、よりシンプルでアコースティック色が強い感じですが、その素晴らしさは不変の輝きを放っています。中でも夕日に染まる黄昏のロンド ンの街並を想像させるインスト曲7.では、フィドルがトラッド風に揺れる中アコーディオンの音色もほんのりと美しく、彼の作品中屈指の出来かと思います。
ジャケットに写っているのは云わずと知れたRonnie Lane's Mobile Studioの勇姿、また裏ジャケにはロニーの地方巡業プロジェクト"Passing Show"の俯瞰写真が載っています。
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See Me / Ronnie Lane (1980)
RCA PL-43285 (CA)
A-1. One Step
2. Good Ol' Boys Boogie
3. Lad's Got Money
4. She's Leaving
5. Barcelona

B-1. Kuschty Rye
2. Don't Tell Me Now
3. You're So Right
4. Only You
5. Winning With Women
6. Way Up Yonder


PRODUCED BY FISHPOOL PRODUCTIONS


ソロ名義で発表された4作目にして最終作、元スリム・チャンスの面々にクラプトン、イアン・スチュアートらが参加しているそうですが、多少リズムが強調されている印象がある他は今まで通りロニーの音楽です。
スタックス・スタイルのリズム(ベースがエラくカッコよい)にアコーディオンとフィドルのトラッド味が交錯するB-1.など彼の最高傑作に押したいくらい の素晴らしさ、つづくB-2.では仄かなラテン・ビートとアコーディオン・ソロが実にイイ感じでこれまた素晴らしい。南部ロックの香り漂うB-3.などは 盟友スティーブ・マリオットが歌ってもカッコよかったような気がします。ゆったりしたストリングスが心和むA-5.はクラプトンとの共作品。ロニーの体に はこの頃すでに病魔が忍び寄っていたそうですが、そんなことは全く感じさせないほどの快作になりました。
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Kuschty Rye: The Singles 1973-1980
   / Ronnie Lane (1997)
NMC Pilot 19 (UK)
1. How Come
2. Tell Everyone
3. Done This One Before
4. Poacher
5. Bye and Bye (Gonna See the King)
6. Roll on Babe
7. Anymore for Anymore
8. What Went Down (That Night With You)
9. Lovely
10. Brother, Can You Spare a Dime?
11. Ain't No Lady
12. Don't Try and Change My Mind
13. Well, Well Hello (The Party)
14. Kuschty Rye
15. You're So Right
16. One Step
17. Lad's Got Money
18. Stone
19. Sweet Virginia


シングルを年代順に並べて2曲がオマケに付いたCDで、1. 3. 8. 9. 10. 13.がアルバム未収録のようです。
伸びやかなアコーディオンとリズミカルに弾けるマンドリンの音色が絶妙なマッチングを見せるヒット曲の1.、サザンソウル・ムード溢れるフェイセス時代のナ ンバーの2.、親しみやすいコーラス入りの英国フォークロックの3.、これら3曲は'73年発売のシングルだそうですが、これだけでもアルバム1枚分くら いの充実度です。フェイセスの演奏はラフすぎて印象に残らなかった2.のヴォーカル、ちょっとニック・ロウに(が)似ていますでしょうか。良い味出してるカヴァーの 10.はエンディングにフィドルとサックスの演奏が付いたヴァージョン。13.は初期夕焼け楽団みたいな緩いブルース。アルバム収録曲も改めて聴くと良い曲が 多いなぁ、と気付かされたりします。
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La Booga Rooga / Andy Fairweather Low (1975)
A&M SP-4542 (US)
A-1. My Bucket's Got a Hole in It
2. Jump Up and Turn Around
3. Halfway to Everything
4. Booga Rooga
5. Champagne Melody

B-1. If That's What It Takes
2. 8 Ton Love
3. Grease It Up
4. Wide Eyed and Legless
5. Inner City Highwayman

PRODUCED BY GLYN JONES


クラプトンのサポートを長年に亙って務めてきたアンディ、こちらは3作目のソロ。ロニーの参加はありませんが、スリムチャンスやフェイセスのメン バーを始めとした豪華サポート陣のタイトな演奏によってなかなか出来映えとなっています。硬質でソウルフルなヴォーカル・スタイルが彼の持ち味のようです が、ベニー・ギャラガーのアコーディオンが印象的なB-1., B-2やオールド・タイミーなメロディの美しいA-3., A-5など、どことなくスリムチャンス風な雰囲気が漂っています。中でもフォークダンスを思わせるB-2.が秀逸。かと思うと、ファンクなA-2やラビッ トのエレピが涼しげに響く軽いタッチのB-4.などもあったりして曲作りにも多彩な才能を発揮しています。随所で聴かれるジョージ・フェイムの小粋なキー ボードにも注目でしょう。プロデューサーの人脈でしょうか、バーニー・リードンも参加してますね。
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