こがらし・えれじぃ

ロック/フォークの創成期に重要な役割を果たされた吉野さんですが、彼の活動範囲はそれだけにとどまらない幅広いものでもありました。

ninjin

  にんじん/友部正人 (1973)
KITTY (URC) H20K25024 (1989)
1. ふーさん
2. ストライキ
3. 乾杯
4. 一本道
5. にんじん
6. トーキング自動車レースブルース
7. 長崎慕情
8. 西の空に陽が落ちて
9. 夢のカリフォルニア
10. 君が欲しい

技術:吉野金次、野村正樹
制作:アート音楽出版

自分で造って自分で歌う、という作業の中で、作者と作品は濃密な度合いが深くなればなるほど、その作者でしか唄えない歌に昇華されていって作者の 血となり肉となっていく。このアルバムを一聴すれば、Dylan's Childrenの中の一人だとすぐ解る友部正人の表現方法は、ディランの"Another Side"を連想させる。ギターやハーモニカはディランに似ているが、その唄い方は誰にも似ていない、友部正人そのものが表現されている。 高田渡が亡く なった日から何日も経たない頃に、FMラジオの生番組に登場し高田に捧げる歌を唄った友部は、相変わらず昔のままだった。「朝の電話はいい事 が無い」というフレーズが未だ耳について離れない。
重い鉛を飲み込んで身動きできないような気分になるのが友部の歌だ。この「にんじん」もまた当分聴かな いだろう。ディランの60年代のアルバムに似たようなものがある、一度聴くと当分の間聴かないという事が。
kettle


kagawa

親愛なるQに捧ぐ /加川良 (1972)
KITTY (URC) H20K25034 (1989)
1. 偶成
2. こがらし・えれじぃ
3. 夕焼けトンボ
4. 靴ひもむすんで
5. 鎮静剤
6. こもりうた
7. 下宿屋
8. 白い家
9. コオロギ
10. 親愛なるQに捧ぐ

MIXING ENGINEER : 吉野金次



当時友人にレコードを借りて聴いたと思うのですが、スコッチのマスター・テープをそのままジャケットにしたクールなデザインは仲間内で評判を呼ん だものです。その時も普通のフォークのアルバムにはない味があると感じたのですが、吉野さんアレンジのストリングスが入る1.や5.などはちょっとラン ディ・ニューマンを思い出します。その5.は高田渡が同じ詩に別の曲をつけて歌っています。高田渡といえば、彼へのリスペクトの気持ちを(早くも)ストレートに曲 にした7.は、今聴くと余計心に染みてきますね。8.も高田さんの「コーヒーブルース」に影響されたであろう曲想でした。一方、4.は明るいカントリー・ タッチでとても新鮮な感じがしたのを良く憶えています。そして「こがらし・えれじぃ」、当時の加川良といえばこの曲のイメージが強かったのですが、これは 自作ではないのでしたね。はっぴいえんどから3人、伊藤銀次などが参加。
cup


nodamage

No Damage / 佐野元春 (1983)
EPIC 28-3H-81
Boys' Life Side
1. スターダスト・キッズ
2. ガラスのジェネレーション
3. SOMEDAY
4. モリスンは朝、空港で
5. IT'S ALRIGHT
6. Happy Man
7. グッドバイからはじめよう

Girls' Life Side
1. アンジェリーナ  
2. So Young
3. Sugartime
4. 彼女はデリケート
5. こんな素敵な日には (On The Special Day)
6. 情けない週末
7. Bye Bye Handy Love

Producer : 佐野元春
Engineer : 吉野金次

「モリスンは朝、空港で」がたまたまラジオでかかっていて、全然盛り上がっていかないメロディ・ラインに、こんなのあるんかい?と、かなり驚いた 憶えがあります。今改めて聴くとチューバやフリューゲル・ホーンの使用も効果的、プチ・サイケな後半までとても緻密に練られていて再び感心しています。こ の曲とか「ハッピーマン」とかもそうですが、ヴォーカル処理のせいか乾いていてクールな雰囲気が非常に新しかったのでしょう。また短い曲なので聴き逃していま したが、B-2.のベースのチェロを思わせる音でこれがなかなかカッコイイ。
ある意味非常にマニアックな音作りのアルバムがチャートの1位になっていたとは最近まで全く知りませんでした。
cup


gs

G.S.I LOVE YOU/沢田研二 (1981)
POLYDOR 28MX1020
A-1. HEY! MR MONKEY
2. NOISE
3. 彼女はデリケート
4. 午前3時のエレベーター
5. MAYBE TONIGHT
6. CAFEビアンカ

B-1. おまえがパラダイス
2. I'm In BLUE
3. I'll BE ON MY WAY
4. SHE SAID
5. THE VANITY FACTORY
6. G.S.I LOVE YOU

PRODUCED BY KUNIHIKO KASE, SHOICHI MATSUSITA, YOSHIHITO MORIMOTO

MIXED BY KINJI YOSHINO

A面2曲目の'NOISE'を聴いていたら、"ELECTRONICALLY RE-PROCESSED FOR STEREO" 云々と表記されたいろんなレコードの、何とも言えず不安定でモコモコした音を思い出しました。(今考えるとかなり不思議な気もしますが)これらのいわゆるニセス テ・レコードは長期に亙って流通していて、ウチにある初期ストーンズのレコードなんかほぼ全てコレ。偽物であるはずのこれらの音が我々にとっては「オリジ ナル」であるという屈折感漂う事実を否が応でも想起させるように、'Satisfaction'やら「ひとりぼっちの世界」などからの流用を織り交ぜつつ 本物そっくり?に再現してみせています。
他にも、ドラムが左から聞こえて来るリヴォルヴァー風のA-1.、'Under My Thumb'のリフが引用されるB-5.、ダメージを受けたカセット・テープで聴いてい るみたいなA-3.、というようにデジャ・ビュを誘うような凝った音作りがなされています。
ジュリー本人や元春(コーラスでも参加)らによる楽曲も充実していますが、ベストはやっぱりかまやつさん作曲のB-4.、看板に偽りなし、文句なしの出来です。全編を通して、伊藤銀次のアレンジがこの上なく素晴らしいことも特筆すべきでありましょう。
cup


hako1

流れ酔い唄/山崎ハコ (1978)
キャニオン FX-8003

A-1. 流れ酔い唄
2. 罪
3. 青信号
4. うちと一緒に
5. ヨコハマ

B-1. さいなら
2. 今日からは
3. きまぐれ
4. 夜明け前


どんよりとした曇り空の下、ぶらぶらと10分ほど歩いて根岸橋に向かう。国道16号沿いの停車場から市電に揺られて伊勢佐木町へ。右手には道路と 並行してあまりきれいとはいえない運河があり、干涸びたような艀が繋がれている。天神橋、中村橋、睦橋、橋の名前がそのまま停車場の名前になってい る。小雨がぱらついてきたみたいだ。用事を済ませて帰る頃には雨は本降りになっていて、市電の窓からはついさっきまでとは違う景色が広がっている・・・というような 時に?聴きたい歌、「ヨコハマ」収録のアルバム。吉野さんによる厚みのあるストリングス・アレンジが情感を盛り上げます。この歌の舞台が何処なのかは分か らないのですけど、ハコさんは此処からさほど遠くない高校に通っておられたそうなので、ひょっとすると雨の掘割川の風景を見たことがあるかもしれません。
その他、日活映画とかで歌われそうなA-2.、命令口調とシャッフルビートが心地良いA-3.など佳曲が多い。
cup


hako2

歩いて/山崎ハコ (1980)
キャニオン  C28A0117F

A-1. 夢
2. 我が里
3. 道を探せ
4. 黒いバス
5. 小さな海

B-1. 歪み板
2. 何もいらない
3. 君は自由か
4. 13の女の子
5. 歩いて

Engineer : 吉野金次、水谷照也


あんまり有名な曲は入っていないのですが、ウッド・ベースと生ギター主体の編成の効果でしょうか、歌唱、演奏とも抑え気味の表現の中に力強い求心 力を感じる好作品集。B-2.やB-3.はロック的なテイストの曲ですがあえてエレクトリック化しなかったアレンジは正解。A-5.は「ヨコハマ」の続編 的な小品、ちょっと童謡的な感じがします。突き放したような歌い方と言葉のリズムが面白いA-3.には吉野さんや中島みゆきさんらがコーラスで参加してい ます。B-4.は「呪い」よりよっぽど怖いかも・・・
蛇足ですが、ハコさんが通っていた高校のすぐ脇(というか下)には「ゆず」のお二人が通っていた中学校があり、奇しくも吉野金次コネクションが数十年の時を経て成立しているのでした。
cup

一本道
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