JOURNEY THROUGH THE PAST


benno

LOST IN AUSTIN / Marc Benno (1979)
A&M SP 4767 (US)
A-1. Hotfoot Blues
2. Chasin' Rainbows
3. Me And A Friend Of Mine
4. New Romance
5. Last Train

B-1. Lost In Austin
2. Splish Splash
3. Monterrey Pen
4. The Drifter
5. Hey There Senorita

Produced and engineered by GLYN JOHNS

ロンドンはオリンピック・スタジオをベースに数多くの名作を送り出したエンジニア/プロデューサーであるグリン・ジョーンズ、ブリティッシュ・ビート黎明 期から活動しビッグ・ネームとの仕事が多いにもかかわらず、(あまりにも当たり前すぎて)今までとりたてて注目することも少なかったのでしたが、マッギネ ス・フリントやロニー・レインなどの特集をやっていくうちに、彼の関わった作品があまり に多いことに今更ながらビックリ、で、今回の特集となった次第で す。
さてさて、スワンプ・サウンドの重要人物、マーク・ベノのこの作品はオリンピック録音、ケルトナー、クラプトンらを従えてのシンプルなバンド・スタイルで の演奏で、シンプルにホイホイと出来上がったかのような第一印象ですが、重心が低くメリハリの利いたリズム・セクション、アコースティック・ギターの響き をより重視した音作りなどなど、回を重ねるにつれグリン・ジョーンズの肝ともいえるような要素が聴こえてくるようです。A-1.やB-4.あたりの独特の グルーヴを持った曲での主役はやはりケルトナー、シンプルながら陰影に富んだドラミングはジョーンズのサウンドにはピッタリではないでしょうか。またA- 2.やA-4.などではかすかなストリングスを背景に用いて奥行きのある空間を演出、ほのかな甘さをも感じられます。
ここでのクラプトンはとても渋い、A-1.のリズムを弾くようなスライドと、ラストでの曲の朴訥ともいえるアコースティック・ソロが印象的。もちろんマー ク・ベノのトーキング・スタイルのほんわかヴォーカルと、いかにも南部的なギターが魅力なのはいうまでもありません。
コテコテのアメリカンと思っていたスワンプ系のレコードの中にも、実はグリン・ジョーンズの感性が息衝いているのでした。
cup


rita

Nice Feelin' / Rita Coolidge (1971)
A&M SP 4325 (US)
A-1. Family Full Of Soul
2. You Touched Me In The Morning
3. If You Were Mine
4. Nice Feelin'
5. Only You Know And I Know

B-1. I'll Be Here
2. Better Days
3. Lay My Burden Down
4. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)
5. Journey Through The Past

Produced by David Anderle




例えばゴスペル・タッチのB-3.を聴くと、ゆったりと自然に沸き上がってくるようなリタのソウルフルな歌声に心を奪われます。作者にも名を連ねる Mike Utleyのオルガンもいつもながら利いていますが、徐々に盛り上がっていく感じはホント良い感じ。ピアノも担当しているB-5.はニール・ヤングの作 品。ヤング自身の演奏はライブ録音だけだったかな、スタジオ録音ではリタの秀逸さには追いつかないと思ったのでしょうか。バックを支えるのはマーク・ベノ とデキシー・フライヤーズの面々。一発録りのような瑞々しくクリヤーな演奏ですが、ラフな感じはあんまりしなくて、むしろ気品さえ漂う明快な音色が印象 的。録音自体はアメリカ西海岸ですが、グリン・ジョーンズは英国アイランド・スタジオにおいてリミックスも担当しております。全曲を通してヴォーカルに広 がりを与えているエコーとか、デイブ・メイソンのスワンプ作品A-5.での遠近感など、アルバムにグッと奥行きを与えているようです。正に「犬ジャケに駄 作なし」(中ジャケにいるの知らなかったワン)の格言通りのアルバム。
cup


slowhand

Slowhand / Eric Clapton (1977)
RSO SPELP 25 (UK)
A-1. Cocaine
2. Wonderful Tonight
3. Lay Down Sally
4. Next Time You See Her
5. We're All The Way

B-1. The Core
2. May You Never
3. Mean Old Frisco
4. Peaches And Diesel

Produced by GLYN JOHNS

クラプトン久々の英国録音盤。カラオケ外国曲の一番手として知られる(かどうかは個人差によりますが)A-2.が入っていたり、ライブで聴ける曲も数多い のに、アルバム全体を聴く機会は意外に少なかったのですが、改めて低音部に厚みのある、芯の通った音像にビックリ。なんといってもアタックが強く、ヌケが 良い割に重いビートを叩き出すドラムスのグイノリの迫力に耳が行きます。4本のマイクでドラムスを録音するやり方はグリン・ジョーンズ・メソッドと呼ば れ、英国では定番となっていたそうですが、確かにリズムのうねりが際立つような独特の感覚がありますな。
この頃のクラプトンは流麗なソロを決めるというよりも、リズムの隙間にグイッとフレーズを突っ込むようなギター・ワークが特徴だったような記憶があります が、このアルバムもその傾向を渋く発展させたようなスタイル、'Cocaine'やB-1.でのゴリゴリッとした感じとか、スライドがヴォーカルとユニゾ ンで絡むB-3.なんかは、例えば「461〜」あたりでは聴けなかった泥臭さもうかがえます。今までスルーしていたA-3.でのギターも、硬めの音色と チョーキングがなかなか渋いです。
cup


cocker

Joe Cocker! (1969)
A&M SP 4224 (US)
A-1. Dear Landlord
2. Bird on a Wire
3. Lawdy Miss Clawdy
4. She Came in Through the Bathroom Window
5. Hitchcock Railway

B-1. That's Your Business
2. Something
3. Delta Lady
4. Hello Little Friend
5. Darling Be Home Soon

Produced by DENNY CORDELL and LEON RUSSELL


ウッドストックやマッドドッグスなどライブではダミ声とワイルドなパフォーマンスが身上のジョー・コッカーですが、このセカンド・アルバムではちょっとイ メージと違って、どこか自然体で抑制されたムードが感じられます。グリース・バンドを核とした布陣でのアメリカ録音ですが、リミックスをグリン・ジョーン ズ(マスター・エンジニアのクレジット)が担当している影響もあるのか、B-3.A-5.などライブ感覚を残しつつもホットになりすぎないバランスの良 さ、気品のようなものが漂っています。時々やりすぎの傾向が見られるリオン・ラッセルがそんなに目立っていないのも良い方に作用しているかもしれません。 レナード・コーエン作のA-2.はサザン・ソウル・テイストの逸品、抑えた歌声が心に染みます。ルースなノリのA-3.A-4.のメドレーは、グリース・ バンドならではの英国スワンプ。リタ、ボニーらお姉様たちのコーラスが各所で大活躍しています。
cup


fright

Stage Fright / The Band (1970)
Capitol SW-425 (US)
A-1. Strawberry Wine
2. Sleeping
3. Time to Kill
4. Just Another Whistle Stop
5. All La Glory

B-1. Shape I'm In
2. W.S. Walcott Medicine Show
3. Daniel and the Sacred Harp
4. Stage Fright
5. Rumor

TODD RUNDGREN ; Engineer
GLYN JOHNS : Mix Down

Capitol Re-Issue SN-16006 (US)

初めて買ったThe Bandのレコードは"Rock of Ages"ではなかったかと記憶しているのだが、その中でも印象に残ったのがB-1.とB-2.で、このLPはB面を良く聴いた覚えがある。確かに5曲共 に良 く出来ていて一気に聴かせる力を持っている。
The Bandの作品は"Music from Big Pink"が最高傑作で、後は段々レベルが落ちてゆく、と誰かのレコード評で読んだことがある。それも一理あるとは思うが、このアルバムは全体を通して一 つの色に染められているような気がする。
B-2.のMedicine Showとは音楽を演奏しながら薬を売り歩く人々のことで、このバンドの足跡を表現しているかのようだ。B-4.のStage Frightを辞書で引いたら「場おくれ」、「舞台負け」という意味だと知った。'See the man with stage fright'という歌詞が出てくるが、舞台で緊張してビビっているのかな、そんな状況が歌われているのかもしれない。
kettle

hiatt

Slow Turning / John Hiatt (1988)
A&M CD 5206 DX 003682 (US)
1. Drive South
2. Trudy and Dave
3. Tennessee Plates
4. Icy Blue Heart
5. Sometime Other Than Now
6. Georgia Rae
7. Ride Along
8. Slow Turning
9. It'll Come to You
10. Is Anybody There?
11. Paper Thin
12. Feels Like Rain

Produced by GLYN JOHNS

コレ、バリバリの南部録音ではありますが、プロデュースの力か英国的な趣味の良さが随所に現れてまして、80年代シンガー・ソングライターの作品としては 最高級のレベルにあ る作品でしょう。多少大味で異種格闘技的緊張感のあった"Bring The Family"と比較しても、優しく柔らかいトーンを基調とした音作りや密度の濃い演奏において、やはりこちらの方が上かも。けっこう弾きまくっているサ ニー・ランドレスのスライドも上手くサウンドに溶け込んでいる感じです。アーロン・ネヴィルのカヴァーでも知られる魅惑のソウル・ナンバー12. ('Rainy Night in Georgia'を思い出す) をはじめ、 楽曲も非常に充実しているだけでなくヴァラエティにも富んでいて、ケイジャンしてる3.やらスローなブギの7.があるかと思えば、どことなくニック・ロウ が作 りそうな4.やカントリー・ロックの5.があったりします。11.の腰にくるリズム・ギターとか10.のゴスペル風コーラスはやはり ストーンズを思い出してしまいます。産業ロック的なサウンド全盛時の当時、あえて70年代的な音作りにこだわったともいえる逸品。
cup

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