INTO THE MYSTIC


moon

Moondance / Van Morrison (1971)
WARNER BROS. BSK 3103 (US)
A-1. And It Stoned Me
2. Moondance
3. Crazy Love
4. Caravan
5. Into the Mystic

B-1. Come Running
2. These Dreams of You
3. Brand New Day
4. Everyone
5. Glad Tidings

Producer : VAN MORRISON

ヴァン・モリソン名曲集とも評されるワーナーでの2作目。最早スタンダードと言ってもいいフォー・ビートの傑作タイトル曲を始め、A-3.、A-4.など 名 品の並んだA面は、アコースティックな響きが印象に残る内省的な雰囲気、落ち着き、風格さえ漂う流れは正に圧巻といえるでしょう。映画「ラスト・ワルツ」 での度肝を抜くパフォーマンスも有名な'Caravan' も、ここではアコースティック・ギター、独特のホーンの音色とアレンジを生かした個性的な演奏で収録されています。ファルセット気味な唱法が一段と情感を 湛えるA-3.の雰囲気は、インプレッションズの'People Get Ready'を想起させます。サザン・ソウル風味のB-3.など、B面にいくとさらにR&Bテイストが強まっているようですが、ここでもホーン・ セクションが独特の味を醸し出 して、アルバムの統一感を高めているようです。後半になるにつれて、演奏も華やかに、楽し気になっていきますが、バロック風なイントロで始まるB-4.で 登場のフルートやリズムなど、ちょっとアイリッシュな感じもします。'Brown Eyed Girl'のギターもちらりと出てくるラストも楽し気で、最後の一滴まで美味しい。
cup


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Meet Me at the Crux / Dirk Hamilton (1978)
ELEKTRA 6E-125 (US)
A-1. Mouth Full of Suck
2. Billboard on the Moon
3. All in All
4. Welcome to Toyland
5. Tell a Vision Time

B-1. Heroes of the Night
2. Meet Me at the Crux
3. How Do You Fight Fire?
4. Every Inch a Moon





アコースティックな雰囲気で聴くなら、デビュー・アルバム、そしてバンド・サウンドで聴くなら、このアルバムでしょう。特にB-2.のタイトル曲、そして 3曲目の"How Do You Fight Fire"、これに限ります。この曲の聴きどころは、これでもか、これでもか、とリピートする'How Do You Fight Fire'のコーラスで、その間に入るハミルトンの合いの手というか、シャウトみたいな叫び声が、延々2〜3分続く、6分以上ある後半部がスリルとテン ションの極地へと連れて行ってくれます。ヴァン・モリソンの影響が色濃く出ていますが、ヴァンのオリジナルでもこれだけ緊張感のあるコーラスはなかなかな いんじゃないかと思います。強いて挙げるならば"Veedon Fleece"の中の'Cul De Sac'に匹敵するような感じは受けますが、ここでのハミルトンは完全にヴァンを超えています。シャウトはハミルトンそのものから出ている、オーラを感じ ます。
kettle

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Thug of Love / Dirk Hamilton (1980)
ELEKTRA 6E-249 (US)
A-1. Out to Unroll the Wheel World
2. Turn off the T.V.
3. Colder Than Mexican Snow
4. Moses & Me
5. I Will Acquiesce

B-1. Main Attraction
2. Need Some Body
3. Wholly Bowled Over
4. Change in a Child's Hand
5. In a Miracle

Produced by DIRK HAMILTON & DON EVANS

時折ヴァン・モリソンのようにも、グレアム・パーカーのようにも聴こえますが、リズムに歌詞(何を歌っているのかは良く分からないのですが)を乗せるやり 方が独特のグルーヴを生み出すダーク・ハミルトン、'80年のこのアルバムにおいても基本的には変わらない印象で、特にA面の5曲は、ゴリっとした明快な ロック・チュ−ンと、シンガー・ソングライター的な抑えた雰囲気の曲がバランス良く配されています。A-2.なんかはスプリングスティーンの曲をヴァンが カヴァーしたらこうなるかな、的な雰囲気があります。ワルツのA-4.ではガース・ハドソンがシンセとアコーディオンで参加、これもA-2.と同じ匂いが しますね。一方、やっぱりドミノかぁ、のB-1.で始まるB面は、タイトなリズムのソウル風な曲調が多くなるようで、ミディアム・テンポのB-3.やメン フィス・ソウルを思わせるB-5.など心地よく乗れる曲が続きます。ギター中心のサウンドの中にあって、目立たないながらも随所でイイ味を出しているオル ガンにも注目。
cup


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Greetings from Asbury Park, N.J. / Bruce Springsteen (1973)
CBS SONY 25AP1272 (JP)
A-1. Blinded by the Light
2. Growin' Up
3. Mary Queen of Arkansas
4. Does This Bus Stop at 82nd Street?
5. Lost in the Flood

B-1. Angel
2. For You
3. Spirit in the Night
4. It's Hard to Be a Saint in the City


Produced by Glenn Frey, Joe Walsh,Glyn Johns & John Stronach

USLP : columbia PC 31903


第2のディランというふれこみでCBSが売り出そうとしたデビューアルバムの国内盤には、北中正和さんの解説と真崎義博という人の対訳が載っているので、 そ れらを頼りにこのレコード評を書きたいと思う。改めて対訳歌詞を読んだところ、その乱雑さ、荒い言葉の使い方、何がなんだかサッパリ分からなくなった。か ろうじてクラレンス・クレモンスのサックスが慰めてくれるけれども、レコードの中のブルースは熱く語っている。ただ何かを言いたいからじゃなく、内なるエ ネルギーを発散させるためにこのような歌い方をしているのかもしれない。ディランとは全然違う。ディランが言葉を発する時、自分自身を第三者が見るような 醒めた姿として捕らえている。ブルースは完全に熱くなっていて、言葉の飛礫を投げてくる。
余談ですが、第2のディランはいっぱい出てきたけれど、第2の岡林というのは出てこなかったな。
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Jackie...Plus  / Jackie De Shannon (2003)
Rhino Handmade  RHM2 7832 (US)

1.Paradise  2.Heavy Burdens Me Down
3.Brand New Start  4.Only Love Can Break Your Heart
5.Laid Back Days  6.Full Time Woman
7.Vanilla O'Lay 8.Would You Like to Learn to Dance
9.I Won't Try to Put Chains on Your Soul 10.I Wanna Roo You
11.Peaceful in My Soul 12.Anna Karina

13.When I'm Done 14.Drift Away
15.All the Love That's in You 16.Speak Out to Me
17.Hydra 18.Your Old Lady's Leaving
19.Grand Canyon Blues 20.Sweet Sixteen
21.Flamingos Fly 22.Santa Fe
23.Wonder of You 24.Through the Gates of Gold

Reisuue Produced for Release by Jim Pierson, Remastering : Dan Hersch & Bill Inglot

USLP : Atlantic SD 7231 (1972)
Produced by Jerry Wexler, Tom Dowd and Arif Mardin

ヴァン・モリソンに近い女性シンガーというのはあんまり思い浮かばないので、ここはジャッキーさんに 再度登場願うしかないでしょう。アメリカン・サウン ド・スタジオ録音の本編では"Tupelo Honey"から10.をカヴァーしていますが、それ以上に変拍子とアコースティック・ギターのストローク、スキャット・ヴォーカルが"Astral Weeks"に肉薄する勢いの自作曲5.などは、完全にヴァンの雰囲気といっていいでしょう。マリアンヌ・フェイスフルのヴァージョンでも知られる名曲 7.でも、ギター・リフが同じリズム感だったり。さらに大量に収録された追加曲の中では、20.から23.までの4曲がヴァンの作曲&プロデュース作品、 ちょっと懐かしい匂いのするR&B調の20.(シン グルで出たらしい)では、楽し気にデュエットも披露しています。ヴァン自身のヴァージョンも有名な続く2曲もポジティブな力強さを感じさせる作風ですね。 「ザ・ウェイト」的な曲かな、と思うと、リズムが変わってカッコよくホーンが滑り込んでくる23.も素敵な出来映えです。その他でもホーン・セクションが いかにも、の15.みたいなのがあったりして、流石ジャッキーさん、かなりの男前です。
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Into the Music / Van Morrison (1979)
EXILE 5305454 (2008 EU)
1. Bright Side of the Road
2. Full Force Gale
3. Steppin' out Queen
4. Troubadours
5. Rolling Hills
6. You Make Me Feel So Free
7. Angeliou
8. And the Healing Has Begun
9. It's All in the Game
10. You Know What They're Writing About

11. Steppin' out Queen
12. Troubadours

Produced by VAN MORRISON

ソウル・ミュ−ジックとアイリシュ・トラッド、内省的な静謐さと明るい開放感、一見相反するように見える要素を、ヴォーカルのドライブ感とアレンジの力に よって見事に昇華した驚愕の完成度を誇るアルバムがこれ。特にPee Wee Elisのアレンジによるホーン・セクションの見事さは他に例えようもないほどで、アルバム全体の印象を決定しているようです。Pee Wee Elisは、ヒット曲かな?と勘違いするほど軽快なソウル・チューンの6.において、これまた驚愕のサックス・ソロを披露しています。この曲、ピアノのリ フが何かに似ているな、と思っていたら、JTの"Smilin' Face"でしたね。トラッドからの影響は、ホーンと呼応するように全編を流れるフィドルの音色や、ペニー・ウィッスルの使用でも明らかですが、特に5. は伝承歌そのもののような迫力を湛えています。
実はこの作品、友人に借りたレコードからダビングしたテープでさんざん聴いていたので、自分で買ったのはCDになってから。そのCD(1998年盤)も結 構音は良かったと 思うのですが、今回のリマスター盤は、音の立ち上がりがさらに良くなった印象で、広がりを感じさせる音質になっています。
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