Jackie De Shannon

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非常に重要な人物であるにもかかわらず、イマイチ採り上げられる機会の少ないこの音楽 家、というか、あちらこちらで名前だけは頻繁に登場するもののまとめて語られることが少ない人なのです。CDも(ベスト盤を除くと)思い出したようにしか リイシューされない現状がクヤシイので、こちらで何枚か紹介してしまおう。

Official Site : http://www.jackiedeshannon.com/jackiedeshannon.htm

Jackie De Shannon(ジャッキー・デシャノン)。
1944年生まれのケンタッキーガール。
'50年代にモー娘的にデビュー後、LAをベースに活動。1stアルバムではDylanのレパートリー等フォーク寄りの曲を採り上げたりもしていますが、 同時にソングライターとしても活躍、'60年代前半にはThe Searchersのヒットをアシストして、ブリティッシュ・インベンションの一翼を担いつつ、英国では若き日のJimmy Pageと共演、共作、フォークロックサウンドの先鞭をつけるような楽曲を発表します(後年の"ZEP III"収録、'Tangerine'はジャッキーさんについての歌だそうです)。さらに、デビューアルバムへの楽曲提供、自身のレコーディングへの起用 など、The Byrdsの登場にも大きく貢献します。ビートルズの米国ツアーではサポーティングアクトも務めました。バカラックの曲で自らトップ10ヒットをものにす るも、'60年代も後半になると次第に南部/ゴスペル指向を強めていきます。

この時期のジャッキーさんの魅力は、クオリティの高い楽曲もさることながら、なんといってもその歌声、歌い回しにある、といえるでしょう。いわゆる美声で はなく、どちらかというとオバさん声で「歌い飛ばす」感じ。時々コブシの効いた癖のある歌い方をするので、ザラッとした印象もあるのですが、不思議と可愛 らしさと明るさが同居しているという、多少乱暴に言うと「ノリノリになったBonnie Raitt」的なイメージでしょうか。 ちなみにJackson Browne氏は、彼女が自作の歌を歌うのをテレビで観て、自分もやってみたいと思うようになったそうです。



LAUREL

laurel canyon / Jackie De Shannon (1968)
Imperial LP-12415 (US)

A-1. Laurel Canyon
2. Sunshine Of Your Love
3. Crystal Clear
4. She's My Best Friend
5. I Got My Reason
6. Holly Would

B-1. You've Really Got A Hold On Me
2. The Weight
3. Bitter Honey
4. Come And Stay With Me
5. L.A.
6. Too Close

Produced by Charles Green & Brian Stone A York / Pala Records, Inc., Production


シンガーソングライターとか女性ロッカーといった分野が存在していなかった当時、レコード会社的に言うとジャッキーさんは普通のポップスシンガーという扱 いだったようで、Liberty / Imperial時代はあまり自由にレコードを作れなかった、と本人は語っているようです。でもなかなかどうして、ここでは演奏陣共々(Mac Rebbenack 、Harold Battisteといったニューオリンズからの移住組の他、Russ Titleman、Barry Whiteなどが参加)やりたい放題、パワー全開といった感じ、ライブ感溢れる(ヘッド・アレンジっぽいです)ゴスペル風味満点の傑作に仕上がっていま す。

'68年7月、「卓袱台をひっくり返す星一徹」の如きアルバム、"Music from Big Pink"が発売になります。で、ジャッキーさんのこのアルバムは、業界騒然のさ中、同年10月のリリース。ジャケにもでっかく記載されているとおり 'The Weight'をカヴァーしていますが、'Big Pink'へのいち早い回答といえるでしょう。後年の映画「ラストワルツ」における、The Staple Singers + The Bandの演奏と雰囲気がけっこう似ております。

もうひとつ、何故かそちら方面では採り上げられることが少ないのですが、これはスワンプ・ロックの夜明けを告げる作品としてとらえることもできそうです。またポップなB-5.、アコースティックなB-4.(Marianne Faithfullで有名)を織り交ぜるなど、一筋縄ではいかない展開も用意されています。
プロデューサー陣にはBuffalo Springfieldのマネージャー/プロデューサーを起用している。



put

PUT A LITTLE IN YOUR HEART / JACKIE De SHANNON (1969)
Imperial LP-12442 (US)
A-1. Put A Little Love In Your Heart
2. You Are The Real Thing
3. River Of Love
4. Keep Me In Mind
5. Mama's Song
6. Movin'

B-1. You Can Come To Me
2. You Have A Way With Me
3. I Let Go Completely
4. Always Together
5. Love Will Find A Way
6. Live

Produced by : VME Productions



絶好調のジャッキーさんは翌年、ポジティブなメッセージが歌われる全米トップ5シングルをタイトルに冠したカッコいいアルバムを発表。 これ、ジャケットの清楚な佇まいとは異なり、LA産レディサザンソウル(?)といった趣です。骨太のリズムといい迫力のホーンセクションといい、良くアレンジされた演奏の充実度には驚かされます。前作と違い、今回は自作(共作)曲が中心となっているのも特徴のひとつ。
相変わらずかわいい歌声ですが、ちょっと男っぽいところも魅力です。A-6.のノリはCCR、B-3.のカントリーフレーバーはDan Pennを思わせます。ホーンの使い方が歌謡ポップスみたいな(笑)B-5がお気に入り。
ちなみに、次のアルバム"To Be Free" (Imperial LP-12453)も同趣向の内容ですが、こちらもじっくり聴かせる秀作です。
 


songs

SONGS / Jackie De Shannon (1971)
CAPITOL ST-772 (US)

A-1. Keep Me Warm
2. Lay Baby Lay
3. West Virginia Mine
4. Show Me *
5. Down By The Riverside

B-1. International
2. Sunny Days
3. Salinus
4. Bad Water
5. Ease Your Pain

Produced by Jackie Deshannon, Eric Malamud snd John Palladino
*
Produced by Chips Norman


これはいつになくヴォーカルを際立たさせるようにプロデュースされたシンプルな印象のアルバム。タイトル通り10の小品が行儀良く並んでいます。 DylanのA-2.や英国バンドMcguinness FlintのカバーB-1.、さりげなく美しい自作のB-3.等でも伺われるように、フォーク寄りの静かな楽曲が多いので、同じLAのRandy Newmanのような朴訥な感じに近いのかななどと思っていると、リズム感抜群なB-4.あたりでガツンとやられるので油断はできません。

ブルックリン育ちのキャロルさんの一家に一枚アルバム、"Tapestry"と同じメンバー、Danny KootchとRuss Kunkelが演奏に参加しているのですが、印象はかなり違います。カリフォルニアガールのジャッキーさんは(おそらく)ギターで曲を作ったりする人なん で、その辺の資質の違いでしょうか。
聴き込むほどに味わいを増す逸品といえますが、(こっそり聴きたいので)未来永劫CD化されないことを願っております。




jackie_plus

Jackie...Plus  / Jackie De Shannon (2003 REISSUE CD)
Rhino Handmade  RHM2 7832 (US)
(1972 Original : Atlantic SD 7231)

1.Paradise
2.Heavy Burdens Me Down
3.Brand New Start
4.Only Love Can Break Your Heart
5.Laid Back Days
6.Full Time Woman
7.Vanilla O'Lay
8.Would You Like to Learn to Dance
9.I Won't Try to Put Chains on Your Soul
10.I Wanna Roo You
11.Peaceful in My Soul
12.Anna Karina

13.When I'm Done
14.Drift Away
15.All the Love That's in You
16.Speak Out to Me
17.Hydra
18.Your Old Lady's Leaving
19.Grand Canyon Blues
20.Sweet Sixteen
21.Flamingos Fly
22.Santa Fe
23.Wonder of You
24.Through the Gates of Gold

Atlantic SD 7231 : Produced by Jerry Wexler, Tom Dowd and Arif Mardin
13-19 : Produced by Tom Dowd,
20-23 :
Produced by Van Morrison for Caledonia Productions, INC. , 24 : Produced by ANTISIA MUSIC
(Reisuue Produced for Release by Jim Pierson, Remastering : Dan Hersch & Bill Inglot)

キャピトルとの契約終了とともに、ジャッキーさんは当然のようにアトランティックと契約。プロデュース陣にアトランティックの重鎮(トムとジェリーは映画 "Ray"にも登場してました)を迎えて、メンフィス録音を敢行します。そうしてできたのがジャケットが素敵な"Jackie"。 Steve Goodman、John Prineといったシカゴ・フォークシーンのソングライターの楽曲やNeil Youngの4.も素晴らしいアレンジ。10.はもちろん5.あたりもモロVan Morrison的。

加えてこのCDでは、たくさんの未発表曲が聴けますが、20-23はそのVan Morrison本人との共作、共演。Vanの歌声は控えめで、軽快な感じに仕上がっています。22.は後にVanのアルバム、"Wavelength" で採り上げられることになる曲です。この時期彼らはちょっとしたライブ活動も行ったそうですが、御両人ともまだ来日していない最後の大物?なので、どうせ ならジョイントでもやってくれたら・・・
24.は名人Jesse Ed Davis作のゴスペルで2度ビックリ。

'70年代には後4枚アルバムを作りますが、いずれもが魅力的な作品です。その後長〜いお休み中にグラミーとっちゃうというのも凄いですが、2000年に は、20数年ぶりのシリアスな作品、"You know me" (Varèse Sarabande 302 066 169 2)を発表しています。次回作が期待されます。



コンピレーションCDは多数出ているようですが、手元にあるものだけザッとあげておきます。'When You Walk in the Room'は全てに収録されていますが、左右のチャンネルがひっくり返っている(ミックス違いか?)ヴァージョンもあります。
 
1990 Good As Gold / Jackie DeShannon (US)
(Pair PCD-2-1284)
全体の編集意図は不明ですが、1stアルバムから2曲収録されています。
1991
THE BEST OF JACKIE DESHANNON (US)
(RHINO R2 70738)
レーベルをまたいだ選曲。"laurel canyon"からも2曲。Great!

1994
What the world needs now is...
Jackie De Shannon - The Definitive Collection (US)
(EMI E2 29786)
Liberty / Imperial時代のコンピ。詳細なディスコグラフィ添付。Tracy Ullman, 'Breakaway'の作者ヴァージョンはこちらで。Great!
2005
The Ultimate JACKIE DeSHANNON (EU)
(EMI LC5042)
これも編集意図は不明ですが、"laurel canyon", "Songs"からも選曲されています。

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Text by cypress002

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