HANNIBAL


rem

Fables of the Reconstruction / R.E.M. (1985)
I.R.S. IRS-5592 (US)
A-1. Feeling Gravity's Pull
2. Maps and Legends
3. Driver 8
4. Life and How to Live It
5. Old Man Kensey

B-1. Can't Get There From Here
2. Green Grow the Rushes
3. Kohoutek
4. Auctioneer (Another Engine)
5. Good Advices
6. Wendell Gee

Produced by JOE BOYD

ボストン生まれのプロデューサーであるジョー・ボイド、この名前を初めて意識したのはこのアルバムの発表の頃、まぁ当時はてっきり英国人だと思っていた わけですが、ミュージシャンやエン ジニア出身のプロデューサーと違ってアレンジや音響的に目立った特色がないためか、フェアポート関連のアルバムなどで名前を目にしても特に記憶に残ってい な かったのではないかと思います。さてR.E.M.、登場の時から独特のうねりを持ったギター・バンドではありましたが、このアルバムではリズム・ギターの 切れ味はそのままに、スピードを抑制しつつ沈み込むような高密度 のグルーヴが加わり、呪術的ともいえるこれまた独特のヴォーカルとも相俟ってさらに深みのあるサウンドを構築しています。ロンドンでのレコーディングはい ろいろと困難を伴ったとも言われていますが、そうした緊張感は特にA面の楽曲に色濃く表れているようです。B面はバンジョーも登場する静かなアコース ティック・ムードのB-6.を筆頭に、流れが少し緩やかな印象で、B-2.やB-5.などジーン・クラークやニール・ヤングといった先達の名前が浮かぶよ うな佇まいです。エンジニア(JERRY BOYS)の貢献も感じられる仕上がりですが、駄作のないIRS時代のアルバムの中でも音の締まり具合はピカイチと言えるでしょう。
JOE BOYD RECORD PRODUCER/WRITER
cup


nick

Five Leaves Left / Nick Drake (1969)
ISLAND ILPS 9105 (1970 UK)
A-1. Time Has Told Me
3. Three Hours
4. Way to Blue
5. Day Is Done

B-1. Cello Song

2. Thoughts of Mary Jane
3. Man in a Shed
4. Fruit Tree
5. Saturday Sun

Produced by JOE BOYD



昔私が創った『地下室』という歌の冒頭、「ねじれた神経を病む者は暗闇の思考をいつもふところにひそませている」という詞があって、これは私自身の体験か ら生まれたものなのだが、ニックもやはりねじれた神経を病んでいるな、と思わざるを得ないのが、このアルバムだ。そして、あまり語られないのが、彼のギ ター・ワーク、独特のフィンガー・ピッキング・スタイルはトラッドともブルースとも全く無縁のもので、彼にしか出来ないプレイが繰り広げられている。彼の 声とギターは誰にも真似の出来ない、深く静謐で濃密な音空間を創り出し、聴いている我々リスナーに自分の内面のさらに奥まで問いかけてくるような重さを 持っているようだ。このLPを買った日、酔っ払って家に帰り、さらにバーボンを飲みながら、深夜にステレオのヴォリュームを下げて初めて聴いた時には、ア ルコールが私の中を駆け巡っているな、と実感したものだ。
kettle


pink

Relics / Pink Floyd (1971)
CAPITOL SN-16234 (US)
A-1. Arnold Layne
2. Interstellar Overdrive
3. See Emily Play
4. Remember a Day
5. Paintbox

B-1. Julia Dream
2. Careful with That Axe, Eugene
3. Cirrus Minor
4. The Nile Song
5. Biding My Time
6. Bike

Produced by NORMAN SMITH, THE PINK FLOYD & JOE BOYD


ジョー・ボイドは60年代当時、ブルース関係のマネージメント等を手がけていたらしいのですが、英国でのブルース熱の高まりに感銘を受けついには移住まで して しまったそうです。彼がUFOクラブというロンドンのナイトクラブ(アングラ/サイケの殿堂だったらしくフェアポートやジョン・マーティンも演奏してい た)でイヴェントを仕切っていた折のメイン・アクトがピンクフロイドで、その関係からか彼等のデビュー・シングルA-1.をプロデュースしています。シ ド・バレット作のこの曲、1967年2月27日の録音みたいですが、当時のライブの雰囲気が容易に想像できるA-2.などとは違って、オルガンの響きが印 象的なシングル向きの作品です。歌詞の内容は実在した下着泥棒の話ということでかなり変わっていますが、そこそこヒットしたそうです。 その勢いでセカンド・シングルA-3.もシド・バレット作、プロデューサーは変わりますが憶え易いメロディでさらにチャートを上げたそうです。このアルバ ムはピンクフロイドの60年代の録音を編集したアルバムですが、B-1.は70年代になってから日本で「夢に消えるジュリア」というGSみたいなタイトル が付いてシン グルになり、ラジオでもよくかかっていました。友人と二人、高校の文化祭でこの曲を演奏したのが懐かしい。
cup


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Dancer with Bruised Knees / Kate & Anna McGarrigle (1977)
WARNER BROS. BS 3014 (US)
A-1. Dancer With Bruised Knees
2. Southern Boys
3. No Biscuit Blues
4. First Born
5. Blanche Comme la Neige
6. Perrine Était Servante

B-1. Be My Baby
2. Walking Song
3. Naufragée du Tendre (Shipwrecked)
4. Hommage Á Grungie
5. Kitty Come Home
6. Come a Long Way

Produced by JOE BOYD


「膝小僧を打撲したダンサー」という訳の分からないタイトル同様、音楽もなかなか一筋縄ではいかない、カナディアン姉妹の確か2作目。つい先頃惜しくも他 界されたケイトさんと、その姉アンナさんがそれぞれ単独で作って持ち寄ったオリジナル曲とトラッド等で構成されていますが、ケイトさんの作る曲はどちらか といえば 取っ付き易い感じ、デイブ・マタックスを迎えてフランス語でレゲェしてしまうB-3.などは後のワールド・ミュージックにも通じる趣、そういえば近年の ジョー・ボイドはこちら方面にも熱心に取り組んでいるようです。アンナさんの方はクラシカルな曲調が得意らしく、コントラ・バスとピアノで歌 われるA-2.なんかはヨーロッパの古い歌曲みたい。メドレーになっているA-5., A-6.はトラッド、メロディとコーラスが美しく、英国風にも聴こえますが、歌詞がフランス語で、古楽のような管楽器が絡んできたりして。ジョー・ボイド 単独のプロデュースということもあるのか、とにかく様々な音楽の混じり具合が尋常ではないので、この前後の作品と比較してもかなりディープ な雰囲気が漂います。実はコレ、発売当時に一度購入したのですが、ジャケットが何だか気色悪いな、と思ってしまって、一度処分の憂き目に遭い、つい数年前 になって買い戻したのでした。
cup


maria

Maria Muldaur (1973)
WARNER BROS. P-8406R (JP)
A-1. Any Old Time
2. Midnight at the Oasis
3. My Tennessee Mountain Home
4. I Never Did Sing You a Love Song
5. Work Song

B-1. Don't You Make Me High (Don't You Feel My Leg)
2. Walkin' One and Only
3. Long Hard Climb
4. Three Dollar Bill
5. Vaudeville Man
6. Mad Mad Me

Produced by LENNY WARONKER & JOE BOYD
USLP : REPRISE MS 2148

ライ・クーダー、デヴィッド・リンドレー、エイモス・ギャレット、クラレンス・ホワイトなど、夢のようなギタリストが揃ったこのアルバム、レニー・ワロン カーとジョー・ボイドの共同プロデュースで、ハリウッドで録音されている。マリアの名前を一躍世に知らしめた'Midnight at the Oasis'は当時のFEN(現在のAFN)でヘヴィー・ローテーションで毎日かかっていたような気がする。この曲ではやはり決定的な腕前を披露したエイ モスのギターを語らずして何が言えようか、という感じ。柔らかいタッチでギターの弦を鷲掴みにして、一音も二音もチョーキングするかのような彼独特のギ ター・ソロは初めて聴く人々の耳を魅了すること間違いなしだ。ジャズ界においては、何年何月何日のプレイは最高だ、といった表現がされるけれど、この曲は それらに匹敵するような名演だ。誰もが書いていることだが、私もやはりコレしかないと思う。
kettle


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Is Having a Wonderful Time / Geoff Muldaur (1975)
REPRISE MS 2220 (US)
A-1. Livin' in the Sunlight (Lovin' in the Moonlight)
2. Gee Baby, Ain't I Good to You
3. 99 1/2
4. I Want to Be a Sailor/Why Should I Love You

B-1. Higher & Higher
2. Wondering Why
3. Jailbird Love Song
4. High Blood Pressure
5. Tennessee Blues

Produced by JOE BOYD


ジョー・ボイドとエンジニアのジョン・ウッドの黄金コンビのサポートで制作されたジェフ・マルダーのソロ第2作。アメリカン・ミュージックの四方八方を知 り尽くした達人たちによる大傑作であることは今更言うまでもありませんが、ベースの迫力といいホーン・セクションの質感といい、音質の点でも抜群なレコー ドであります。ビング・クロスビーのオールド・タイミーな冒頭からブルージーなA-2.へと続くA面は独特の緊張感と生真面目さが表れているよう。星屑ギ ター炸裂の「ジー・ベイビー」はエイモスの3大名演のひとつに数えられるほどですが、ジェフ自身によるアレンジもヴォーカルもギターに負けず素晴らしいで す。A-4.のブルース・ギターはコーネル・デュプリーかな。B面にはおおらかなノリを感じさせる名曲が並んでいますが、ミシシッピー・シークスのB- 3.(最初はカントリーの曲かと思っちゃいました)ではマリアやフリッツ・リッチモンドが参加してのジャグバンド大会。ヒューイ・スミスのB-4.ではエ イモス再び登場ですが、ドクター・ジョンをさらにパワー・アップしたようなジェームス・ブッカーのピアノも聴きどころでしょう。おまけにラストではリ チャード・トンプソンまで登場です。さてもう一回聴こうかな。
cup

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