WATCHING THE DARK


fly

Henry The Human Fly / Richard Thompson (1972)
ISLAND ICL 38 (JP)
A-1. Roll Over Vaughn Williams
2. Nobody's Wedding
3. The Poor Ditching Boy
4. Shaky Nancy
5. The Angel's Took My Racehorse Away
6. Wheely Down

B-1. The New St. George
2. Painted Ladies
3. Cold Feet
4. Mary And Joesph
5. The Old Changing Way
6. Twisted


Produced by RICHARD THOMPSON and JOHN WOOD

久しぶりの来日に心も躍る今日この頃、ということでリチャード・トンプソン、作品数も膨大なためなかなかすべてを聴くことは叶わないのですが、どのアルバ ムにも必ずと言っていいほど名曲があるので油断は出来ません・・・などと呑気に書き始めたところで、大変な地震、大津波、そして原発大事故が起こってしま い、6月現在依然災害は継続中、リチャード・トンプソンの来日も中止になってしまいました(5月には被災地支援のベネフィット・コンサートに参加したよう ですが)。
さて気を取り直して、このファースト、伝承曲を思わせる深みのあるメロディ・ライン、がっしりとして硬質なリズム感覚、バグパイプかフィドルの旋律を模し たようなギター・ソロなど、ファースト・ソロにして既にリチャードの個性が十二分に確立されていると言ってよいでしょう。自身の弾くアコーディオンがさら に音像を歪めてゆくような重々しいA-1.、マーティン・カーシーが歌うアルビオン・カントリー・バンドのヴァージョンを聴いた時にはトラッド曲としか思 えなかったB-1.(カビ臭いホーンが良い味)、オープン・チューニングらしきギターとダルシマー、フィドルで演奏される古色蒼然とした超名曲A-3.な ど、ソング・ライティングの確かさも尋常ではありません。またザ・バンドを思わせる始まり方のA-2.では、間奏で「モリス・オン」みたいなダンス曲のス タイルも顔をのぞかせるなど、ほっとさせる部分も。ピアノでサンディ・デニーも参加しています。
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silver
 
  Pour Down Like Silver / Richard & Linda Thompson (1975)
ISLAND IPLS 9348 (US)
A-1. Streets Of Paradise
2. For Shame Of Doing Wrong
3. The Poor Boy Is Taken Away
4. Night Comes In

A-1. Jet Plane In A Rocking Chair
2. Beat The Retreat
3. Hard Luck Stories
4. Dimming Of The Day/Daragai

Produced by RICHARD THOMPSON and JOHN WOOD

1974年の"Hokey Pokey"とこのアルバムの2枚は、フェアポート時代を除いてリチャード&リンダ、リチャードの一連のソロ・アルバムの中で、私が一番気に入り評価して い るアルバムだ。特に静と動、陽と陰、明と暗、それぞれの要素がくっきりと打ち出されているようで、(前作は明の要素が強い感じであったが)このアルバムは 暗の部分の比重が多くなっているようだ。リチャードのリード・ヴォーカルによるA-4.、リンダがリードをとるB-4.、この2曲はアルバムの白眉、両方 ともリチャードのアコースティックが静かな熱気を感じさせる作品で、2人共根性のすわった歌声を聴かせてくれる。リンダとのコンビ解消後、リチャードはソ ロ・アルバムを作り始めるのだが、それらはエレクトリックな響きが段々と強くなり、私にとってはあまり喜ばしくない。アコースティックな手触りが感じられ るこのアルバムの頃が、やはり一番似合っている気がする。
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beat

Beat The Retreat: Songs By Richard Thompson (1994)
CAPITOL CDP 0777 7 95929 2 0 (US)
1. Shoot out the Lights
2. Wall of Death
3. When the Spell Is Broken
4. Turning of the Tide
5. For Shame of Doing Wrong
6. Down Where the Drunkards Roll
7. Beat the Retreat
8. Genesis Hall
9. I Misunderstood
10. Madness of Love
11. Just the Motion
12. Valerie   
13. Heart Needs a Home
14. Dimming of the Day
15. Farewell, Farewell
16. Great Valerio

Produced by JOHN CHELEW


ロス・ロボス、グレアム・パーカー、デヴィッド・バーン、ファイブ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ等、リチャード・トンプソンの楽曲を様々なアー ティストがカヴァーしたいわゆるトリビュートもの。前半のハイライトは2.と3.、フォーク・ロックな曲調とR.E.M.のサウンドがピタリとハマった感 のある2.は、スティール・ギターとアコースティッ ク・ギターによる導入からコーラスがかぶさる後半まで隙のないアレンジで聴かせます。リンダさんのヴォーカル曲ではなくRTのソロ作品を選んだボニー・レ イットの3.ですが、オリジナルの 雰囲気にソウル・テイストを加味した男前ヴォーカルと、ブルージーなスライドが素晴らしい。7.、8.はジューン・テイバーのヴォーカル、8.は無伴奏で すが7.ではマーティン・カーシーの重いアコースティック・ギターにジェームス・バートンさらにはデヴィッド・リンドレーが加わり、ダニー・トンプソンら のリズムが支えるという別格の扱いです。マーティン・カーシーは15.、16.でマディ・プライアとも共演、16.はオリジナルに近い演奏ですが、元々伝 承曲を借用した15.はメロディを変更し、スティーライ・スパン的世界観を再構築しているかのようです。
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tabor

June Tabor Anthology (1993) 
MUSIC CLUB MCCD 126 (EEC)
1. Mississippi Summer
2. Verdi Cries
3. Strange Affair
4. She Moves Among Men (The Barmaid's Song)
5. Lay This Body Down
6. The Band Played Waltzing Matilda
7. Night Comes In
8. The King Of Rome
9. Lisbon
10. The Month Of January
11. Hard Love
12. Dark Eyed Sailor
13. Heather Down The Moor
14. Cold And Raw
15. Sudden Waves
16. No Man's Land/Flowers Of The Forest

Compilation by JOHN CROSBY


1976年から1992年までのアルバムから選ばれた廉価なコンピレーション、TOPIC以外の録音も含まれています。ジューン・テイバーのオリジナル・ アルバムはどういうわけか敷居が高く、永らくオイスター・バンドとの共演盤"Freedom and Rain"しか知らなかったのですが、1.、7.、12.がそのアルバムからの選曲、この3曲のみがリズム隊付きで、リチャード・トンプソン作の7.は原 曲と違いスピード感のある演奏に乗っ て歌われますが、静寂感漂うヴォーカルはエレクトリックなサウンドをも吸い込んでしまうような力を感じます。リチャード・トンプソンのカヴァーはもう1 曲、3.はマーティン・シンプソンとの共演盤からの選曲らしく、華麗でカラフルなギター・ワークを中心としたらテイバーさんとしては少し厚めのアレンジ と、クールな佇まいの歌声が印象的です。テイバーさんは名曲'Waltzing's For Dreamers'もカヴァーしているようですがこちらは未聴。ワルツと言えばアカペラで淡々と歌われる反戦ソング6.に登場する'Waltzing'は 「あてもなくさまよう」という意味だそうで、さらにこの歌、ポーグスの演奏で初めて聴いた折にはてっきり古い歌だと思っていたら、1971年作とのこと で、この年齢になっても知らないことだ らけです。
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firstlight

First Light / Richard & Linda Thompson (1978)
  Chrysalis CHR 1177 (UK)
A-1. Restless Highway
2. Sweet Surrender
3. Don't Let A Thief Steal Into Your Heart
4. The Choice Wife
5. Dief For Love

B-1. Strange Affair
2. Layla
3. Pavanne
4. House Of Cards
5. First Light

Produced by JOHN WOOD aand RICHARD THOMPSON



発売当時は出ていることさえ知らず6、7年経ってから安売りコーナーで偶然見つけたレコード。だから地味な作品、という訳では全くなくて、珍しくアン ディ・ニューマック&ウィリー・ウイークスという都会派コンビのリズム隊を起用しての完成度の非常に高いアルバムです。リズム・セクションが変わったから といっても英国伝承曲の雰囲気を基調としたリチャードの曲作り、サウンドに大きな変化は見られませんが、ユニゾンで歌われるA-3.での軽いファンキーな テイス ト等はこのアルバムならではでしょう。ダルシマーとマンドリンが明るい音色を響かせる冒頭曲はちょっとカントリー・ロックな感じ、後ノリのリズム隊の個性 が引き立つ仕上がりとなっています。メロディアスなA-2.やB-1.でのリンダ・トンプソンの落ち着きのある歌声にはいつもウットリと聴き入ってしまい ますが、各楽器のアンサンブルの妙にダルシマーのアクセントが効果的に響くB-3.の格調あるサウンドはこのテの曲の白眉。ときどき現われるアラビア風 (インド風?)なアレンジも良いアクセントとなっています。デイブ・マタックスは今回はパーカッションで参加。
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Shoot Out the Lights / Richard & Linda Thompson (1982)
  HANNIBAL HNCD 1303 (US)
1. Don't Renege On Our Love
2. Walking On A Wire
3. Man In Need
4. Just The Motion
5. Shoot Out The Lights
6. Back Street Slide
7. Did She Jump
8. Wall Of Death

9. Living in Luxury

Produced by JOE BOYD

リチャード&リンダとしての最後の作品で傑作の誉れ高い1982年の作品。リチャードとサイモン・ニコルのギター、デイブ・ペグ、デイブ・マタックスのリ ズムという4ピース・バンドでの演奏が中心で、音数は少ないながらも各パートが有機的に絡み合うようで、フェアポートのメンバーの演奏とは俄には信じがた い硬質な感覚はテレヴィジョンのファーストをちょっと思い出したりもします。ストーンズ・タイプのロックンロール3.やエレクトリックなトラッド・タイプ の6.などリチャードのソロ・パートが若干多めな印象ですが、2.などで聴けるリンダさんの歌声もいつになく突き放したようなクールな感じが漂います。こ の曲はジェリー・ラファティによるプロデュースの元、最初に録音されたヴァージョンが後に発表されましたが、リンダさんはこちらの方が気に入っているよう で、私も同感です。本編最後の8.は12弦ギターの音色も軽やかな少し明るめのフォーク・ロックのこれまた名曲。歌詞の中にはタイトルからほど遠い「回転 木馬」やら「愛のトンネル」などの言葉が見られますが、ここでは遊園地にある遊具のことだそうです。
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WALTZING FOR DREAMERS
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