SUMMERTIME BLUES


power

Power / John Hall (1979)
ARC (Columbia) JC 35790 (US)
A-1. Home At Last
2. Power
3. Heartbreaker
4. So

B-1. Run Away With Me
2. Firely Lover
3. Arms / half Moon
4. Cocaine Drain

Produced by JOHN HALL

思えば2007年、新潟県中越沖地震と柏崎刈羽原子力発電所の事故が最後の警告だったのでしょ う。地震によって原発が破壊されたにも拘らずよってたかって大した事故ではないみたいな話にしてしまい、結果安全性の検証を全くしないまま福島第一原発の 事故、想像もできないほど深刻な放射能汚染が広がり続けています。
さかのぼること30年あまり前、1979年9月のノー・ニュークス・コンサートの 中心人物の一人で、後に下院議員としても活動したジョン・ホールのソロ・アルバムとしては多分3作目がコレ、A-2.はコンサートのテーマ・ソングともい える曲のスタジオ・ヴァージョン、テイラー夫妻がハーモニー/コーラスで参加し、美しいメロディと共に自然エネルギーへの転換を穏やかに訴えています。ク レジットはないみたいですが、イントロのアコースティック・ギターはJTが弾いているのかも。全体的にベアズヴィル録音らしいシャキッとしたサウンドで、 オー リアンズの路線も踏襲している趣、明快で爽やかなA-1.あり、リトル・フィート風味のA-4.(ちょっと薄味)あり、と聴きやすい作品に仕上がってい て、今の厳しい現実の中で聴いても、一瞬ホッとできるかもしれません。B-3.は懐かしめのクロスオーヴァーなギター・インストで始まりますが、後半は ジャニス・ジョップリンに提供した作品のセルフ・カヴァー。
cup


covers

COVERS / THE RC SUCCESSION (1988)
  KITTY H32K 20125 (JP)
1. 明日なき世界
2. 風に吹かれて
3. バラバラ
4. シークレット・エージェント・マン
5. ラヴ・ミー・テンダー
6. 黒くぬれ!
7. サマータイム・ブルース
8. マネー
9. サン・トワ・マ・ミー
10. 悪い星の下に
11. イマジン

Produced by THE RC SUCCESSION



「予言者の言葉は地下鉄の壁や安アパートの廊下に書かれている」というポール・サイモンの印象的なフレーズをそのままコンセプトにしたかのような替え歌 集。 発売中止騒ぎ等で話題になり、結局チャートの1位になったヒット作。チープなリズム・セクションとエッジの効いたリズム・ギターにのせて「さっぱりわかん ねー、根 拠がねー」と原子力発電所の安全神話とやらを一刀両断に切り裂く「サ マータイム・ブルース」は一際インパクトが強い。泉谷しげるや三浦友和、高井麻巳子さん(AKB、じゃなくておニャン子ね)が参加、スネークマン・ショー 的な笑いにくるまれて、正確な情報とメッセージがするっとリスナーに響いてくるような構成は凄いとしか言いようがない。また「牛乳を飲みてぇ」と歌われる 「ラヴ・ミー・テンダー」 は、震災 後に作られた「ずっとウソだった」にある「ほうれん草食いてぇなあぇ」にそのまま繋がっていきます。核戦争の恐怖を歌ったP. F.スローン作の「明日なき世界」では高石友也の訳詞が採用されていますが、中学生の頃ジャックスと高石の共演をテレビで見て非常な衝撃を受けた曲、ここ での 演奏も当時と同じような切迫感が感じられる。
cup


wed
 
  Wednesday Morning, 3AM / Simon & Garfunkel (1964)
Columbia CS 9049 (US)
A-1. You Can Tell the World
2. Last Night I Had the Strangest Dream
3. Bleecker Street
4. Sparrow
5. Benedictus
6. Sound of Silence

B-1. He Was My Brother
2. Peggy-O
3. Go Tell It on the Mountain
4. The Sun Is Burning
5. The Times They Are A-Changin'
6. Wednesday Morning, 3 A.M.

Produced by TOM WILSON
JPLP : CBS/SONY 25AP1361 (1964)

「今太陽は地に落ち/死のキノコ雲に覆われ/地獄のような熱さの目もくらむ閃光の中/死がやってきて汚れた灰を残す〜」、イアン・キャンベルの書いたB面 4曲目の"The Sun Is Burning"の一節だが、この歌がいつ頃どういう理由でできたのかはよく分からない。しかしこの曲の影響力は凄くて、私の持っている音源でいうと、ケ イト・ウルフのベスト盤に未発表曲として採り上げられているし、ダブリナーズのCDにも収録されている。最初に聴いた時、「マッシュルーム・クラウド」と いうインパクトのある言葉が強烈に耳に残ったのだが、当時の反戦反核の雰囲気がよく伝わってくる。静かで美しいアートとポールのハーモニーのせいか、何気 な く聴き過ごしてしまいそうな曲調なのに、メッセージはちゃんと届いてくる演奏になっている。フォークがフォークたる時代の一里塚といえるであろう。
kettle


saito

ずっと好きだった/ウームの子守唄/Phoenix (2010)
斉藤和義
SPEEDSTAR (VICTOR) VICL-36576 (JP)
saito2

雨宿り/斉藤和義 (2011)
iTunes (JP)


ビートルズのルーフトップ・ライブを模したPVの出来の良さとも相俟って、ヒットしていた頃からずっと好きだった「ずっと好きだった」は福島第一原発の大 事故の後のトピカル・ソングの傑作「ずっとウソだった」の元歌、電力会社、教育、マスコミがばらまいてきたウソを厳しく糾弾し、「逃げ場はない」と いう厳しい現実を見つめる歌詞に生まれ変わっています。「想定外」、「ほうれん草」(後には牛肉)「東電も北電も中電も九電も」というノヴェルティ的要素 も気が利いていますが、直近のヒット曲の本人による替え歌というフォーマットが何しろ新しい。レコード会社がYouTubeにこの曲の削除依頼を出したと かいう噂もありましたが、ネット社会の伝搬力の前には全くの徒労だったようです。「武道館ベイビィ」のリフレインが思わず泣き笑いになるライブ・ヴァー ジョンの"Phoenix"と、新曲の「雨宿り」はどちらも忌野清志郎への思いを歌っています。「雨宿り」はディランの"Blind Willie McTell"を思わせる曲調で、重く厳しい内容ながら心に響く作品。原発事故の後に作られたと思われますが、マスコミの垂れ流す「頑張ろう日本」の空 虚なキャンペーンに対 して警鐘を鳴らす深みのある作品となっています。
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mania

MANIA MANIERA / moon riders (1982) 
TENT (CANYON) C28A0474 (1986 JP)
A-1. Kのトランク   
2. 花咲く乙女よ穴を掘れ   
3. 檸檬の季節   
4. 気球と通信   
5. バースディ   

B-1. 工場と微笑   
2. ばらと廃物   
3. 滑車と振子   
4. 温和な労働者と便利な発電所   
5. スカーレットの誓い   

Produced by MOON RIDERS



薄気味悪く繰り返される「便利な発電所」のリフレインと、騒々しく煽るようなコーラスの対比が面白いB面の「温和な労働者と便利な発電所」、「便利な発電 所」が何をさしているのかは明示されていないものの、コーラスの歌詞に「一人一人つくれシェルター」とある(今現在の国内の状況にぴったりのメッセージ か?) ので、これはおそらく1979年のスリーマイル島原子力発電所の事故等を意識したものでしょう、三文オペラ風ムーンライダースの真骨頂。このアルバムは最 初CDのみの発売で、プレーヤーがほとんど普及していなかった当時誰も聴くことが出来ない特殊なものでした。数年後カセット・ブックとこのアナログ盤に よってようやく一般労働者の耳に届くことになった作品ですが、そうしたタイム・ラグは全く感じられず出来立てほやほやの新作かと思うような新鮮な音像であ りました。従来のヨーロッパ風なメロディとメタリックなリズムが程良くブレンドされた統一感のあるサウンドですが、中でも鈴木博文の作詞が光る「工場と微 笑」は 京浜工業地帯の端っこで育った(我々自身のような)子供達の気分を歌った名曲。
cup
呆阿員全院安保
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