VICTORIA


arthur

Arthur Or The Decline And Fall Of The British Empire /THE KINKS (1969)
PYE NSPL 18317 (UK)
A-1. Victoria
2. Yes Sir, No Sir
3. Some Mother's Son
4. Drivin'
5. Brainwashed
6. Australia

B-1. Shangri-la
2. Mr. Churchill Says
3. She Bought A Hat Like Princess Marina
4. Young & Innocent Days
5. Nothing To Say
6. Arthur

produced by RAY DAVIES

 


1969年発表のキンクス作品、ウッドストック・ネーションには目もくれず、ヴィクトリア時代に生まれ2度の世界大戦と政治に翻弄される労働者階級出身の 主人公アーサーの悲喜こもごもの物語を歌うレイ・デイヴィス先生であります。現在では一大傑作として有名なアルバムですが、発売当時は(折からのロック・ オペラ・ブームで話題には上ったものの)テーマのローカル性からか日本での評価は芳しくなかったように記憶しています。サウンド的には、ミュージカルで もロック・オペラでもなく、英国気質丸出しのミュージック・ホールの劇中歌といった趣、軽妙かつ皮肉の利いた名曲A-1.からギター・リフが耳に残る B-6.まで隙はありません。元々テレビ・ドラマと連動した企画だったということで、途中で曲調が変わるメドレー風なA-2.、B-2.などもあります が、各 曲の完成度は高く、アレンジがしっかりしていてわざとらしさはありません。ストリングスとハープシコードの音色も美しいA-3.は第1次世界大戦を背景に した 反戦歌、マイホームを桃源郷に見立てたB-1.や一点豪華主義を皮肉ったレトロなB-3.など、キンクスらしさ全開です。カンガルーのお腹から丸顔のヴィ クトリア女王が現われるジャケットの仕掛けも爆笑でした。
cup


book

  Bookends / Simon & Garfunkel (1968)
COLUMBIA XPC 9529 (US)
A-1. Bookends Theme
2. Save The Life Of My Child
3. America
4. Overs
5. Voices Of Old People
6. Old Friends
7. Bookends Theme

B-1. Fakin' It
2. Punky's Dilemma
3. Mrs. Robinson
4. A Hazy Shade Of Winter
5. At The Zoo

Produced by PAUL SIMON, ART GARFUNKEL and ROY HALEE

このアルバム、A面だけがコンセプト・アルバムになっている。テーマは「老い」、サイモンは1941年生まれで、アルバムが発表された'68年には27 才、単純計算すれば現在72才ということになる。タイトル曲の「オールド・フレンズ」の歌詞に'How terribly strange to be seventy' (70才になるなんて何て恐ろしく奇妙なことだろう)という一節があるが、70を過ぎたサイモンは今どういう気持ちなのだろう。A-3.の歌詞には 'all come to look for America'(誰もがアメリカを求めてやってくる)という一節があるが、サイモンはアメリカを見つけたのだろうか。冬の公園のベンチにブック・エンド のように一対になって座っている老人たちの姿、来年60才になる私にとっても老いという課題は切実な重さを持ってやってくる。
kettle


act1

PRESERVATION ACT 1 / THE KINKS (1973)
PICKWICK ACL-7072 (US)
A-1. Morning Song
2. Daylight
3. Sweet Lady Genevieve
4. There's A Change In The Weather
5. Where Are They Now?
6. One Of The Survivors

B-1. Cricket
2. Money & Corruption/I Am Your Man
3. Here Comes Flash
4. Sitting In The Midday Sun
5. Demolition

produced by RAY DAVIES

RCA時代のキンクスはなんかしつこい感じがしてファンの中でもあんまり好きじゃない人もいるようで、しかもこのアルバムは、'68年の『ヴィレッジ・グ リーン』の焼き直しヴァージョンというか続編、さらにストーリー的にも途中まで、という非常に分の悪い位置にありますが、本人達はそんなことは全く意に介 していないようで、ブラスバンド風なホーン・セクションもメンバー登録して溌剌とした演奏を聴かせております。田舎の村を舞台に、悪徳資本家と労働者の味 方を自称する怪し気な政治家の対立が物語の機軸らしいですが、それぞれの曲の出来が良いので、歌詞が分からなくても面白さは十分伝わってきます。B-4. は発売当時何故かラジオでよくかかっていた牧歌的な隠れ名曲、ビートルズの「恋する二人」をパクった?ハーモニカが楽しいA-3.も調子が良いです。レ イ・デイヴィス先生はときどき意味不明なパクリをよくやるので油断なりませんが、そういえばA-6.も多少ストーンズ風かもしれません。で、キンクスの土 臭い 演奏が楽しめるのはこのアルバムまで、ACT 2になるとストーリー的にも戦争やら革命が起こったりする展開なので、演奏もエッジの効いた感じに変化していきます。
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tommy

TOMMY / THE WHO (1969)
  MCA MCAD 10801 (US)
1. Overture 2. It's A Boy
3. 1921 4. Amazing Journey
5. Sparks 6. Eyesight To The Blind (The Hawker)
7. Christmas 8. Cousin Kevin
9. The Acid Queen 10. Underture
11. Do You Think It's Alright? 12. Fiddle About
13. Pinball Wizard 14. There's A Doctor
15. Go To The Mirror! 16. Tommy Can You Hear Me?
17. Smash The Mirror 18. Sensation
19. Miracle Cure 20. Sally Simpson
21. I'm Free 22. Welcome
23. Tommy's Holiday Camp 24. We're Not Gonna Take It
25. See Me Feel Me / Listening To You

PRODUCED BY KIT LAMBERT


ピート・タウンゼントはキンクスの『ヴィレッジ・グリーン』は最高だぜ、みたいなことを話しているようですが、やはりレイ・デイヴィスの影響で物語アルバ ムに 興味を持ったのでしょうか。ケン・ラッセルの映画版の印象が強いこともあって、このオリジナル・ヴァージョンはそんなにスゴいというわけでもなくて、特に 前半のコード・ストローク中心の演奏は時に冗長で退屈にもなるのですが、The Whoというバンドはレイ・デイヴィスと違い、コンセプトのマルチ・メディア化に長けているのか、四重人格(ほとんど未聴なのですが)の時も後に傑作映画 を生み出したりしているわけで、何というか面倒くさいバンドではあります。で、アルバム中盤から後半にかけては、短いジングルや擬似オペラ風な曲やをはさ みつつ、キーボードを使って変化を付ける演奏になっていきます。独立した曲としても有名な9.は結構ハードな印象があったのですが、実はほとんどがドラム レス、ヒット曲13.ギターの切れ味が群を抜いていて、後のパワー・ポップ的雰囲気もあります。
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panta

マラッカ / PANTA & HAL (1979)
  FLYING DOG FLD-10013 (JP)
A-1. マラッカ
2. つれなのふりや
3. ブリキのガチョウ
4. 裸にされた街

B-1. ココヘッド
2. ネフードの風
3. 北回帰線
4. 極楽鳥

DIRECTED BY 鈴木慶一
PRODUCED BY 平田国二郎



ベース・ギターとパーカッションが挑発するラテン・ロック・ビートに彩られたA-1.では、「喫水線もギリギリの岩礁地帯」と歌われていますが、マラッカ 海峡という特殊な場所の、いろ んな意味で現在まで続くギリギリの緊張状態をよく表した演奏です。中東からのシーレーン周辺をイメージした曲想以外、特別なストーリーはないものと理解し て いましたが、ジャケットのPANTAの佇まいを眺めているうち、主人公は石油売買に関わるエリート商社マンなのかな、とも思えてきました。一瞬立ち現われ るア ラビア風メロディが素敵なB-1.は壮大なラブ・ソング、B-2.はストリングスも交えたダンサブルなラテン・ディスコ、いずれも魅力的ですが、演奏の難 度が高そうで、レコーディングの苦労が忍ばれる作品です。ガムランを模したシンセの音で始まるA-2.はご存知国産レゲェの最高峰、ヘヴィーな演奏と、 安土桃山期の小唄のフレーズを引用したリフレインの浮遊感とのコントラストは唯一無二の感覚です。A-4.は美しく哀しいバラード、311以後の現在の状 況 を予言するような歌詞を聴くと、愕然として言葉を失います。
cup

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