ACROSS THE GREAT DIVIDE


rco

Levon Helm and The RCO All-Stars (1975)
abc AA-1017 (US)
A-1. Washer Woman
2. The Tie That Binds
3. You Got Me
4. Blues So Bad
5. Sing, Sing, Sing (Let's Make a Better World)

B-1. Milk Cow Boogie
2. Rain Down Tears
3. A Mood I Was In
4. Havana Moon
5. That's My Home

Produced by Levon Helm and The RCO All-Stars

 


病気と闘いながらも精力的にライブ活動を続けていた、ザ・バンド最後の声、リヴォン・ヘルムが4月19日に亡くなった。享年71才。リヴォンが最初に来日 したのは RCOオールスターズを率いてのものでしたが、この時のメンバーの一人でもあり、 リヴォンのファースト・ソロのプロデュースも担当したダック・ダンも、5月に何と東京で亡くなったというニュースが入ってきて、二重に驚いているところで す。このアルバムはMG's、ドクター・ジョン、ポール・バターフィールドを中心にロビー、ガースをゲストに迎えた正にオールスターの演奏、来日時のライ ブではツイン・ドラム編成だったような覚えがありますが、アルバムの方は リヴォン単独、なので彼の独特のリズム感が堪能できる仕上がりです。ブルース/ソウル寄りの選曲にも関わらず、主役の歌い方はカントリー的、というか民謡 的なので、何とも言えないズレ感が強烈な個性を生み出しています。もちろんダック・ダンも活躍、A-2.ではスティーブのコード・ワークとの見事な絡み、 ブルージーなB-2.でのプレイなど印象に残ります。ウッドストック、ニューオリンズ、メンフィス、それぞれの要素の割合が曲によって微妙に異なっている のも楽しみのひとつでしょうか。ロビー、ガースが参加している割にはザ・バンドっぽくないA-5.はドクターのこのアルバムにも入っていますが、冒頭曲も やはりドクターの"REMEDIES" (1970)収録曲。意外にドクターの存在が大きいかも。チャック・ベリーのB-4.の完成されたアレンジにも脱帽です。
cup


theband

  The Band (1969)
CAPITOL STAO-132 (US)
A-1. Across The Great Divide
2. Rag Mama Rag
3. The Night They Drove Old Dixie Down
4. When You Awake
5. Up On Cripple Creek
6. Whispering Pines

B-1. Jemima Surrender
2. Rockin' Chair
3. Look Out Cleveland
4. Jawbone
5. The Unfaithful Servant
6. King Harvest (Has Surely Come)

Produced by THE BAND

このアルバムはザ・バンドの2枚目ではありますが、国内盤はこちらが『ザ・バンド登場』と題されて『ビッグ・ピンク』よりも先に発売されたと記憶していま す。雑誌の広告にあったこのジャケットや「ザ・ウェイト」のシングルの写真を見て、この人達は普段ロッキーの山奥かなんかで木こり生活を営んでいて、とき どき街に降りてきては音楽をやっている40代のおじさんなのだな、などと勝手に納得していたのでした。音の方もしばらく後に友人に借りて聴いたのですが、 A-1.やA-3.といった名曲よりもおかしなリズムのA-2.や毛色の変わった(ように聴こえた)A-5.などが不可解ながらも印象に残りました。今思 え ば2曲ともリヴォンのヴォーカルで、リチャードやリックの情感たっぷりに絞り出すような歌声とは一線を画す陽性な資質に惹かれたのかもしれません。それに しても全編に展開されるこの奇妙なドラミングはなんなのでしょう、急にロールやブレイクが入ったかと思うと変拍子になったり、モコモコと消えていくような 感触になったり、ハイハット、スネアの音のバランスもかなり不思議。リヴォンのドラム・セットにはプロントサウルスの皮がはられているという伝説とか、山 下達郎氏が、コピー 不 能なサウンド、と評したのも頷けるところであります。
cup


levon2

Levon Helm (1982) 
CAPITOL ST-12201 (US)
A-1. You Can't Win Them All
2. Lucrecia
3. Even A Fool Would Let Go
4. I've Got A Bet With Myself
5. Money (Money Cues)

B-1. Get Out Your Big Roll Daddy
2. Willie AndThe Hand Jive
3. The Got Song
4. Give A Little Bit
5. God Bless 'Em All

Produced by JIMMY JOHNSON & BARRY BECKETT

JPLP : CAPITOL (TOSHIBA EMI) ECS-81493

私がザ・バンドを愛して止まないのはリヴォン、R. マニュエル、R. ダンコの3人のヴォーカルが塊となり、渾然一体、腹の底から沸き上がってくる声の集合体がロックの本質を見事に体現しているからであって、誰がリード・ ヴォーカルをとっているからという聴き方は今でもしていない。ザ・バンド解散後、RCOオールスターズを含めるとリヴォンの4作目となるこのアルバム、 ザ・バ ンドの色合いからだんだんと抜け出しているように思える。録音はマッスルショールズ・サウンド・スタジオ、A-5.やB-2.等有名な曲を採り上げている が、全体にポップで聴きやすい音になっていて、B-1.は「ムーン・ドック・マチネー」を想起させるような軽快なリズムが耳を惹く。リヴォンが逝ってザ・ バンドの3人のヴォーカリスト全てがいなくなってしまったのは寂しい限りだが、彼等の残した音源、そしてこのアルバムを含むリヴォンのソロ作品がある限 り、我々の記憶に存在し続けるだろう。
kettle


cate

Cate Bros. (1975)
  ASYLUM 7E-1050 (US)
A-1. Time For Us
2. Union Man
3. Standing On A Mountain Top
4. Always Waiting
5. When Love Comes

B-1. I Just Wanna Sing
2. Can't Change My Heart
3. Easy Way Out
4. Lady Luck
5. Livin' On A Dream


PRODUCED BY STEVE CROPPER



RCOオールスターズ来日の折、メンバーのドクター・ジョンが来られなくなり急遽ケイト・ブラザースがサポートとして演奏に参加していました。スティー ブ・クロッパーがプロデュースしたこのアルバムのA-2.がそのステージでも演奏されたように記憶していますが、代役とは思えない印象に残るステージであ りました。このデビュー・アルバム自体も強靭なリズム・セクションと明解なソング・ライティングが際立つ充実した作品になっています。アール・ケイトの弾 くハイトーン・ギターの音色が際立つA-1.はミディアム・テンポのブルー・アイド・ソウル、ちょっとマッスルショールズの音を思い出します。B-2.も 同傾向の雰囲気ですが、こちらはメンフィス・ソウル丸出し、間奏のリズムが特にカッコいい。またバラードのA-4.では叙情的なスライド・ギターも聴きも の、深みのあるベース・ギターはご存知リー・スクラーです。リヴォンのファースト・ソロで カヴァーされたA-3.、これがオリジナルだと思われますが、 リヴォン自身 がドラムスを担当、ベースがクラウス・ヴォアマン、クロッ パーも交えてレイド・バックした楽し気なセッションが展開されています。ロビー・ロバートソンのトーンを真似たギターはご愛嬌かな。
cup


beach

On the Beach / Neil Young (1974)
  REPRISE 48497-2 (2003 US)
1. Walk On
2. See The Sky About To Rain
3. Revolution Blues
4. For The Turnstiles
5. Vampire Blues
6. On The Beach
7. Motion Pictures
8. Ambulance Blues

Produced by NEIL YOUNG and DAVID BRIGGS


1曲を除き代表曲はないものの、発売のタイミングのためか(意味不明ながらもインパクトのあるジャケットのためか)特に日本での人気が高いアルバムかもし れません。エレクトリック・セットでの演奏が多い選曲の割に落ち着いた雰囲気が漂っていて、聴き飽きることがないのも愛好する人が多い理由でしょうか。 で、ニールの奏でるワーリッツァーのエレピも忘れられない叙情的名曲'See The Sky About To Rain'ではリヴォンが参加、珍しく?ハイハットの目立つドラミングで演奏に変化を与えております。間奏でのリズムのとり方はリヴォンの真骨頂。さらに 次の3.ではリヴォンとリック。ダンコ、ザ・バンドのリズム隊がそろい踏みでぶっといグルーヴを演出、そういえばディラン風な曲調ですが、ディストーショ ン控えめなギターと呼応するようなベースにも迫力があります。動から静に流れる4.へのつながりも良い。アナログ盤ではB面1曲目となる6.は独特の浮遊 感が 印象的な佳曲、7.、8.とアコースティック・ナンバーが続きますが、B面のプロデュースにはニールと共に名匠アル・シュミットがクレジットされていま す。 それにしても'Good times are comin', I hear it everywhere I go. Good times are comin', but they sure comin' slow.'と歌われる5.、深いものがあります。
cup


beach

Jesse Winchester (1970
  BEARSVILLE BR 2045 (CA)
A-1. Payday
2. Biloxi
3. Snow
4. The Brand New Tennessee Waltz
5. That's a Touch I Like

B-1. Yankee Lady
2. Quiet About it
3. Skip Rope Song
4. Rosy Shy
5. Black Dog
6. The Nudge

Produced by ROBBIE ROBERTSON

JPLP : BEARSVILLE (CBS SONY )20AP-1989

ジャケ買いをしてもなかなか当たることはないけれど、このLPは装丁と中身が全く印象通りという数少ない名盤の一枚と言えるだろう。このアルバムをジャケ 買いして喜んだ人々はおそらく星の数ほどいる筈だ。しかも主役は徴兵忌避をしてカナダに逃げた人物であり、その生き方に共感した人もきっといっぱいいるで あろ う。さてこのアルバム、ロビー・ロバートソンがプロデュース兼ギタリスト、ドラムとマンドリンをリヴォンが担当していて、両者の演奏がフィーチャーされて いるが、A-2.、A-4.、B-1.と色々な人にカヴァーされて有名になった曲はもちろん、それ以外の曲もロビーの手腕によってまるで水を得た魚のよう にシブい魅力を放っている。1970年というシンガー・ソングライター達が続々と台頭した時期に生まれた、数少ない本物の輝きを放つ、いぶし銀のような手 触りのする楽曲に仕上がっている。
kettle
KING HARVEST
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